Commemoration | ナノ


此処から動きたくない(アルレイ)








わたしは、先生が好きだった。
好きだったから、本当は勉強が得意なわけじゃないのに、先生が担当してる教科だけは、必死に頑張って勉強した。

(他は、てんでさっぱりだったけどね)

でも、今回は今まで以上に頑張らなくちゃいけなかった。

頑張って全教科でいい点とったら、先生が、連絡先、教えてくれるんだって。


わたしにやる気を出させるための冗談だったかもしれないけど、これはもう、絶好のチャンスとしかいいようがない。

わたしはその為なら、苦手な勉強も頑張ろうと思って、必死になって勉強して、たまに授業中に寝ちゃったりしちゃって。

テストが終わるまでは、先生に会わないようにした。授業中ぐらいしか、先生には会えなかったけど、その顔が見れる授業中だけは、本当に幸せだった。

ねえ先生、わたし達、授業中に何度も目が合ったりしたの知ってる?


我慢して、我慢して、死に物狂いでテストを終えて、わたしは、全教科のテストの結果が書かれている紙を持って、アルヴィン先生がいる資料室へと駆け足で向かった。



「先生、見て見て!!」

「お、結果出たんだ」

「わたし、今回、すっごぐ頑張ったんだよ!」


紙を先生に渡して、わたしは先生の返答を待った。
ほらね、先生、頑張れば、なんでもできるんだよ、できないことなんてないんだよって、先生に伝えたかった。


「…本当にレイアの結果か?」

「なっ、失礼だよ!!ここにちゃんと、わたしの名前、書いてあるじゃん!!」


本当にアルヴィン先生は酷い。
こんなに頑張ったのにな、お父さんやお母さんが見たら、絶対卒倒しちゃうよ。

ちょっとふて腐れてたわたしを見て、先生は「放課後、裏口に集合な、迎えに行くから。周りを見て、誰もいない時に、車に乗れよ」とわたしに一言言って、資料室から出ていってしまった。


待ちに待った放課後、わたしは裏口で、先生が来るのを待った。
下校のピーク時間が過ぎて、人通りも少なくなってきて、携帯の画面を見ながら、いつかな、いつかな、とわくわくしながら、わたしはアルヴィン先生が来るのを待っていた。


連絡先がわからないから、いつになるかわからない。
それでも、ずっと、ずっと待っていた。


とうとう日が暮れて、街灯が付きはじめて、学校の明かりだって、消えていって、真っ暗になっているのに、先生はまだ、来てくれない。

青空のようだった、わたしの澄み切った心も、どんどん曇り空になっていく。

もしかして、すっぽかされちゃったのかな、嘘つかれちゃったのかな、なんて、切なくて、苦しい気持ちが込み上げてきて、目が滲んできて、なんだか自分が虚しくなった。



「レイア!」



一台の車のライトが、わたしを明るく照らす。
わたしは眩しくて、一瞬目が眩んでしまったけど、車から誰かが降りてきて、その人を確認する。


「ったく、まだ、待ってたのか」

「アルヴィンせんせ……」

「まさか、おたくがここまで頑張るなんて思ってなかったから……」


先生だ。やっと、やっと来てくれた。
わたしは走って、先生に抱き着いた。
よかった、来てくれたって、ホッとして、安心して、涙が止まらなくなってしまった。


誰かに見られたら大変だから、と先生はわたしを車の後ろに乗せた。
スモークガラスで、外からは見えないから大丈夫らしい。



「一応、俺、教師だぜ?お前が絶対できないだろうっていう要求だして、これ以上、近くにならないようにしたっていうのに」

「わたしは確かに生徒だけど、もう、子供なんかじゃ……」

「残念だけど、その言葉は聞き飽きました」




先生はわたしの眼鏡を外して、わたしを後部席の窓側に押し寄せて、ネクタイを緩めて、わたしに近づいてきた。
先生のタバコの匂いがする。


「頑張ったごほうびやるから、眼鏡、外して」


とわたしに言い、わたしはおそるおそる先生の眼鏡を外した。
やばい、ドキドキする。触れたくて、顔に手を伸ばそうとした。


「だーめ、ごほうびをあげるのは、俺だから、おたくは触るな」


と言われて、わたしは手を止めて、そうしたらアルヴィン先生の唇が触れていた。

いつの間にか、わたしの髪もほどいていて、顔を持ち上げられて、「んんっ……」と声が漏れた。

外から見えなくても、声が聞こえたらマズイから、なるべく出さないように頑張ったのに。



「あーあ、お前が頑張るから、いけないんだぞ」



唇を離した先生が、低い声でわたしの耳元に囁く。


「だって、先生と連絡交換できるなら、頑張るに決まってるじゃん」

「そこまで愛されちゃってるんだな、俺」

「そうだよ、そこまで好きになっちゃったんだもん」



恥ずかしい愛の告白をしまくったけど、わたしは先生が欲しいから、逃げなかった。



「本当、おたくって奴は…………」




先生はまた、わたしにキスをして、その間に連絡先が書かれた紙をそっと、わたしの制服のポケットに入れて、

わたしが先生を待っていた時間を埋めるくらいのキスを、してくれた。







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アルレイ学パロで甘々(匿名様)
タイトル・異邦人

この度はリクエストありがとうございました!
拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。



2011.10.8


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