愛より出でて、愛より甘し(アルレイ)
卑屈になっている、とでも言うのだろうか。
ミラとエリーゼを見ていると、たまに感じる思いがある。
ミラはもう、理想の女性だ。綺麗だし、頭はいいし、頼りがいがあって、スタイルも抜群で。
何をするにも完璧すぎて、彼女はずるいと思う。
自分もかっこよくキメようと挑戦してみたのだが、尽く失敗に終わってしまい、それが少しだけ切なくなってしまった。
エリーゼは、ふわふわしている。
女の子の可愛いものすべてを、彼女は持っている。柔らかな物腰や、動きのひとつひとつに可愛さを感じさせるし、ずるい。
これから先、成長していけば、エリーゼはきっと、男子が求める女の子になっていくであろう。間違いない。
凛としているミラ、一輪の花のエリーゼ。
なら、自分は何だろうか。
こんな思いを抱いていることは、勿論、二人には話したことはなかった。
自分はもう元気だけが取り柄で、女の子の要素としては、何故だか全部中途半端と考えてしまい、落ち込んでしまった。
(わたしには、何もない)
どうしてなの神様。
らしくないことも心の中で呟いたりもした。
顔だって、そこそこ悪くはないと思うし、ちょっとドジだけど、それも悪くないんじゃない?
脚だってスラっとしているし……――――――
レイアは、水面に浮かんだ自分の姿を覗いていた。そのような事を考えていたタイミングで、レイアが映っていた水面に、小石が転がり、ぽちゃんと落ち、水は波打つ。
「あはは、タイミング悪すぎ…………」
苦笑いをしつつも、更にレイアは落ち込んだ。
「レーイア。」
レイアの背中がしょげているのを見つけたアルヴィンは、あえて、いつもの調子でレイアへと足を進めていった。
どうした、らしくないぞと言いながら。
彼女はアルヴィンを見ては、眉間にシワを寄せている自分に気づき、人差し指を押してシワを治そうとする。
この人の前では、こんなふて腐れている自分の姿を見られたくない。
「どうしたー?」
アルヴィンはレイアの肩を抱く。
これで彼女の機嫌が直っているとは思っていない。今は自分がこうしたいと思ったからこうしたまでだ。
「わたしって、ちゃんと女の子なのかな」
レイアの驚愕な一言にアルヴィンは驚く。
そんなことを言い出すなんで彼女に一体何があったんだろうか。
肩を抱いていた手は、彼女のぽんぽんと頭を撫でる。
当たり前だが彼にとって、レイアは女の子であり、たったひとりの女性。
そんな事を言ってもらっては困る。
「何言ってんだ、女の子に決まってるだろ」
「わたし、ミラみたいにスタイル良くないし、エリーゼみたいに、可愛いわけでもないし」
「ほほー、んなこと気にしてんのか」
なるほどそういうことか。少なからずとも、彼には理解することができた。
自分には何もないとか、そんなことを思っちゃってるわけなのか。
だったら、自分が、たくさんたくさん、伝えてあげようと思って。
だがレイアはアルヴィンから離れ、そして立ち上がってしまった。
「別にいいよ、わたしなんて」
腕を後ろに組み、レイアは踵を軸にして一回転する。
しかし、軸足を捻り、よたよたとしてしまった。それをしっかりとアルヴィンは受け止め、支える。
「っとに、ドジだな」
「……本当、かっこよく決められないもんだね、えへへ」
「そんなことないだろ」
「アルヴィン君……」
レイアの細い腰に両腕を回しては、またレイアがごまかして、離れていかないようにした。
アルヴィンが優しいから、レイアは少し戸惑った。
「俺はおたくが、いい女だってこと、知ってる」
「いいよ、別にそんな」
「マクスウェル様や、姫様には、それぞれの女性らしさや、スタイルがあんだろ。俺はレイアが女の子っぽくないとか、スタイルが悪いとか、そんな風に思ったことなんか一度もない」
「でも」
「正直こんなこと言いたくないけどな、おたくにこれ以上、スタイル良くなられたりしたら、俺が困る」
「どういうこと?」
「他の男が更に、レイアに目がいくようになっちまうだろ」
躊躇ったのはほんの一瞬だった。
ありきたりな言葉なのかもしれないが、大好きな人に言われてしまっては、元も子もない。
だけど。
「でも、いつでも、どんな時も、アルヴィン君にわたしの事、可愛いって思ってもらえるように努力していくんだから」
それだけは、どうしても譲ることはできない。
――――――――――
アルレイでミラやエリーゼに容姿的劣等感を持つちょっと卑屈なレイアを慰めるアルヴィン(匿名様)
タイトル・Evergreen
祝コメありがとうございます(*^.^*)
ちまちまと身を潜めつつ、マイペースにいこうと思います。
今回はリクエストありがとうございました!
拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
2011.11.9
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