Commemoration | ナノ


A thought circuit was paralyzed(ジュミラ)






こんな姿を形にできるとは、思ってもいなかった。
ずっと目にしていた蜜色の髪や、服の形状が、緑色をベースとした髪、白をベースとした服へと変化する。

ミュゼとはまた対になるような衣裳であった。
彼女はヒラヒラとしている長い丈のドレスを身につけ、また自分は、服が体中のあらゆる肌に吸い付いているような、着ているのか、着ていないのかがわからない感覚を醸し出す。


だがミラは、この服を身に纏えば、精霊として気を引き締める事ができた。

鏡に映った自分の姿を見て、そっと鏡に手を添えた。
こうして見ていても、これが自分とはどうしても思えなかった。
人間の姿の自分に見慣れているからだとは思う。


そんな時だった。





――――ガチャン



何かが割れたような、綺麗な音が耳を刺激させる。
ミラはその音の方向へ視線を変えた。
見ると、そこにいたのはジュードであり、カップをトレーをひっくり返してしまっていた。

彼は目を丸くして、呆然としたまま、その場に立ち尽くしている。
ジュードなら慌てて、床に散らばった破片をすぐに片付けるだろうに、そうしようともしていない。

彼は本当に意識がどこかに飛んでいるのがわかった。


(ミラ……?)

ジュードは、ミラの姿に目を奪われていた。

初めて見るミラの姿に、動揺した。
誰か知らない人がいるのかと思った。髪の色も翡翠色をしていて違うし、服装だって、服を着ていないのかと思って目線を逸らそうとしてしまった。

ちゃんと見れば、やはりミラで。
けれど、やはり顔は熱くなる。ミラが裸でいるのではとの錯覚が起こる。

いつもの姿よりも、更に。




「ジュード、大丈夫か、ケガはしてないか」

「…あ、ごめん、いいよ、危ないから、僕がやらかしたんだし、僕が片付けるよ」



カップの破片を片付けようとしていたミラを静止しに、ジュードは下に膝をつく。
そして改めて、彼女を見つめた。


「どうしたの、その姿」

「ああ、ジュードにはまだ見せていなかったな。これは、精霊としての私だ」

「精霊として……」

「ああ、そうだ」




そうか、だから、雰囲気も違うんだ。
ジュードは精霊としてのミラに触れてみたくなり、手を伸ばそうとした。


「痛っ」


伸ばした手の反対の手が、おざなりになり、カップの破片がジュードの指先を切ってしまった。

手は慌てて戻り、ジュードは指先から滲み出た血を止血しようとする。



「かしてみろ」



ジュードの指先はミラの咥内へと連行された。
ミラがジュードの指先を吸い上げる。舌を動かしては、傷痕を塞ぐように舐めた。



「っ……ダメだよ…ミラ、他人の血を…舐めたりしちゃいけないんだよ……血液が違うって反応して……」

「問題ないよ、今の私は人ではない」




ジュードの心配を余所に、ミラはそうすることを止めなかった。



「も、いいから、ミラ」

「ダメだ」



ただでさえ、今のミラを見るのも恥ずかしいのに、こんなことをされてしまっては、更に恍惚としてしまうではないか。




―――――――――
ミラの精霊界の姿を見て赤面するジュード(匿名様)


祝コメありがとうございます(*^.^*)
おかげさまで一万打を迎えることができました。感謝です。

今回はリクエストありがとうございました!
拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。



2011.11.7


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