Lovers of past days(ジュミラ)
本の中で生きることができたらな、と考えたことがある。
自ら話を考えて書くことはできないものの、文章から想像される物語に、入り込む事ができ、キャラクターが動き回っている姿を想像しながら、文字を追いかけていくのは、非常に楽しいことだ。
ミラとジュードは、本を読むことは好きではあったが、読むジャンルに相違があった。
ジュードは基本、医学書や歴史関係の書物、ミラは小説が多い。
勿論、ジュードは小説を読まないわけではなく、ミラも歴史関係の書物には、目を通すことはあった。
リーゼ・マクシアの理について、自分でも、たまに想像しきれないことが記されてあった時には、本当に驚きを隠せない。
今日もこうして本を読む。
ジュードとミラは裸足になった。
室内にいるせいでもあったが、その方が何故か落ち着いていた。
ジュードは片膝を抱え、ミラは胡座をかきながら。
本を読み始めるのは、ミラの方が先だった。
ジュードは、先にコーヒーメーカーで、二人分のコーヒーを作ってから、ミラの手元にコーヒーを置いて、それからミラの隣に座る。
「ありがとう」
「ううん」
ミラが髪を耳に引っ掛ける。
その仕草が色っぽくて、ジュードは軽く咳ばらいをし、視線をずらした。
ミラは、絵になる。
何をしていても、格好よく、そして美しい。
こんな人と一緒にいる事ができるなんて、なんて幸せ者なんだろう。
ジュードが本を片手に取り、ページをめくろうとした時、ジュードの太股に、何かが乗っかる感覚を感じ、ジュードは本の隙間から、太股を見た。
そこには、ジュードの太股を枕代わりにし、横になっているミラの姿。
「ほお……、やはりジュードだな、しっかりとした筋肉だ」
「はあ………」
「なんだ、溜め息をついて。筋肉があることが、そんなに恥ずかしいことなのか?」
「そうじゃ、ないよ」
「……なんてな」
「え?」
いつも突拍子な事をするのは、ミラ。
今まで何度も、頬を染められ、心臓を射ぬかれ、鼓動を早められたことか。
ミラの無自覚な言動や表情が、時々恨めしく感じる事もあったが、それに堪え切ることができないの自分も、面白くない。
ミラが本で口を隠し、ジュードを見る。
「今、この小説のシチュエーションにあったんだ、膝枕。カップルはよくやるみたいだな、だから、試してみたくて」
「それってさ、多分、男女逆だったりしない?」
「よく知ってるな、あ、なんなら、ジュードも私の膝の上に横になってみるか?」
「……それだけは、勘弁してくれないかな」
まるで自分の反応を楽しんでいるんじゃないかって、思わされる時がある。
自分がミラの膝の上に横になったら、きっと今以上に自分が持たない。
嬉しいけど、思考が別世界へと消えていく。
大好きな本の世界へも飛び込めなくなる。
ジュードは本だけに意識を集中させた。
ミラはその場から動かずに、ジュードの膝の上で、小説を読み始めた。
ジュードは、本の世界に入り込むことができず、垣間、本の位置をずらしては、膝の上で読書しているミラを見ていた。
(……まるで、猫みたい)
そんなことを思いつつも、ジュードはわかっていた。
本当は、こうしているのが、嬉しくてたまらないんだ、って。
――――――――――
ジュミラでほのぼの読書関連(匿名様)
今回はリクエストありがとうございました!拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
2011.10.25
← t
op
→