It is the first in the world(アルエリ)
繋いだ手は、誰よりも優しくて。
公園はよく、恋人達のデートスポットだという。
思えば、俺が真面目に、エリーゼ姫と言葉を交わしたのも、夜の公園だった。
俺が昼間夕方に時間を取ることができなくて、エリーゼとゆっくりと話す時間は、夜しかなかった。
彼女は学校に通い始めて、ましてやまだ、夜遊びを経験させるわけにも行かなかった。
それは成人者としての、ちょっとした大人のプライドってやつで。
だから、時間が空いた夜の数分、彼女が今住んでいる、カラハ・シャール内の公園で、エリーゼと会っていた。
彼女がいつも、学校であった出来事を、にこにこしながら、楽しそうに話してくる。
今日のお昼はこんなことがあったとか、授業中に居眠りして怒られた人がいたとか、それを聞いていると、こいつは、とても今、幸せなんだって、なんだか自分も穏やかな気持ちになる。
「ごめんなさい、私ばっかり、話しちゃってますね」
困った顔をして、申し訳なさそうに、エリーゼが言った。
「なんで謝るんだよ、俺は姫様の話を聞くの、好きなんだからさ。もっと話、聞かせてくれよ」
ブランコに座っていたアルヴィンは、目の前に立っているエリーゼの胸元近くにあった、彼女の指先を握り、左右に腕を振る。
それを聞いたエリーゼは、嬉しそうに微笑んだ。
「あ、あと、今日は恋バナもしちゃいました!」
「恋バナ、ねえ……」
「はい」
「ってまさか、俺との事、話したりもしちゃったのか?!」
「アルヴィンには教えられません、女同士の秘密、です」
うわー、マジかよとアルヴィンはうつむいてしまう。
そりゃあ、言えないことをしているわけではないが、こいつが、周りに俺との事をなんて言ってるんだろうと、急に心臓がばくばくしてくる。
こいつには、情けない姿を見せる機会も、多々あったわけだし、いい所なんて見せられていないと思う。
「アルヴィン」
「ん?」
「私のこと、抱きしめてくれませんか?」
エリーゼは両手を離して、腕を広げてアルヴィンに要求した。
この姫様には逆らえない、しかもこんな可愛い顔で言われたら反則だろ、とアルヴィンは心の中で呟く。
「ほら、こいよ、エリーゼ。息ができなくなるまで、抱きしめてやるから」
「はい」
エリーゼは、とたとたと駆け寄り、アルヴィンの胸へと飛び込んだ。
ふわっとしたいい香りが、アルヴィンの鼻を掠めた。
「ひとつだけ、教えてあげますね。アルヴィンは、世界で1番かっこいいって、言ってるんですよ」
「え…」
「世界で1番、かっこいい、ですよ」
「わわわ、わかった、わかったから、そう連呼するな……」
「世界で1番かっこいいアルヴィンが、私は世界一、大好きです」
甘いセリフがアルヴィンの耳に何度も何度も、伝わり、耳が茹蛸になってしまいそうだ。
こんな俺のことを、彼女の周りにいる友達に、かっこいいと言ってくれているのか。
それなら、その期待に応えられるようにならなくちゃいけないよな、と思った。
「世界一かっこいい俺を手に入れた姫様は、世界一の幸せものだな」
―――――――
アルエリで甘々か裏(匿名様)
今回はリクエストありがとうございました!
連載を楽しみにしていて下さっているということで、嬉しいです、頑張ります!
また遊びに来て下さいね。
2011.10.8
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