腕輪

カラメルを薄く伸ばした色だと思った。
鼈甲に似たその色の、腕輪にそっと手を伸ばして。
兄さん、それを買うのかい、魔女のような格好の、年老いた女性が店の奥から声を掛ける。

「ええ、頂きたいのですが。」

一拍おいて伏し目がちにそれを手に取り、カウンターへと運ぼうとすれば、『いや、いいんだ』と止められた。
それがアンタを選んだのだから持って行きなさい、と彼女は告げた。
黒いフードの奥から、不思議な色をした二つ目が覗いた。それは赤とも橙ともつかぬ様なー例えるならば黄昏の色、そして朝焼けの色。
少しの間見入ってしまってから、我に返って丁寧にお礼を言って頭を下げる。
はめてみなさい、そう言われた気がしてそのまま腕輪をするりと嵌めると、あたかも最初から自分のものであったような、不思議な感覚が身体に満ちた。
つい、となぞって煌めく石を見つめる。

よく似合ってるよ、そういえばその石はアンタの瞳の色じゃないか。

カラメルを薄く伸ばしたようなその色は、確かに青年の茶とも金ともつかない瞳によく似ていた。


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