本当に思い付きだった。

「名前、パンツ交換しないかい?」

いつも過ぎた冗談を言うと、彼女はびっくりしたり怒ったり大きな口を開けて笑ったり、色々な可愛らしいリアクションをしてくれる。
今回も、そう期待をして、言っただけだった。

「パンツ?いいけど。今穿いてるやつ?」

「は?」

「今、穿いてるやつ?」

まさかこんな事になるとは思ってなかった。彼女と僕はプラトニックな付き合いしかしていなくて、手を繋いだのが最近で一番ホットな話題だったのだ。

「えっ、あ、うん」

「じゃ、ジェームズも脱いできてね。5分後にトイレの前で」

僕の返事も聞かずに彼女はすんなりと女子トイレに入っていってしまった。
ええええ?なんか凄い事になってない?
そもそも1日穿いたパンツって考えただけで色々とヤバイんだけど、交換って。どうしようパンツ汚れてないかなどうしよう。

そう思いつつも僕は彼女に言われた通り、律儀にノーパンでトイレの外に出てきてしまった。

「…しまった。今日この柄か……」

ちょっとダサいパンツを穿いていた。絶望と恥ずかしさを感じながら、ローブに隠していると、彼女は至って真面目な顔をしてトイレから出てきた。(よくそんな顔を出来るよホント)

「はい、これ」

「あっ!う、うん。僕の、これ」

密売か何かのようだった。

「それじゃ、私もう一度穿いてくるから、後でね」

彼女はクールだった。
ここまできたらノーパンで彼女を置いて走って逃げることも出来ない。しぶしぶと個室に入ったのはいいものの、ここで問題が発生した。


どう考えてもキンタマが入らない。


どう、どう考えてもだ。


そりゃあ僕も男だから、ちょっと匂い嗅いだり被ってみたりパンツにキスしてみたり色々したけど、待っているんだろうなと思いながら急いで穿いたのだが。
入らないのだ。そりゃそうだ。僕のはトランクスで、彼女のは、…なんというか、見たことないけど女の子用の普通のショーツなんだと…思う。それもちょっと浅めの。純白のレースがついたパンツは可愛らしいが、僕のがはみ出して窮屈そうにレースを歪めている。

終わった。

その言葉で頭がいっぱいだった。


「…ジェームズ?まだ?」

「い!いま行くよ!」

奥の手だった。もうキンタマを諦め、僕の大事なところを横向きにし(事細かに説明してごめんよ)どうにかした。6割は出ているがどうにかはした。

「男の子のって、すごくスースーするね。初めて穿いたけど慣れないよ〜」

「…名前、僕やっぱり君が好きだよ」

「え?なに?いきなり」

好きだからどうにか出来たんだと僕は思った。
おしまい。


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