「誕生日?」
シリウスは眉をひそめながら、本当に久しぶりにその声を聞かせてくれました。夕飯を食べているシリウスのところに行ったとき、まるで時が止まったかのように静かになりましたがそれも私の「シリウス、今日は誕生日です」という言葉で何もなかったかのようにざわざわと騒ぎ出しました。もしかしたら最初から静かにはなっていなかったのかもしれません。ただ、私がシリウスに緊張していたのかもしれません。
「へえ。誕生日だって?」
「………」
「何とか言ってあげなよ、シリウス」
「いつもはお祝いをしてやってたんだろ?」
「してねぇよ」
「ほら、かわいそうな“婚約者”が待っているよ、シリウス」
「婚約者じゃねえって」
「……あのさあ」
シリウスが振り向き、ゆっくりと私を見ました。 その目を、見たのは、久しぶりでした。
「シリウス。」
「なんで………泣くんだよ」
シリウス、その周りにいた友達たちも私を見てぎょっとしています。
どうして?どうして、涙なんか。
ぽろぽろと溢れてくる涙は、どうにも止まりませんでした。シリウスと目があったことで、胸がいっぱいになって、いろんな気持ちが溢れ出してしまったのかもしれません。
「俺が泣かせたみたいになるだろ!」
そう言われても、どうにも止まりませんでした。怒鳴られた事によって体はぴりぴりと痛くて、私はまた泣いてしまいました。
「…気分悪りぃ。もう行こう」
そう言って、彼が寮へ戻って行ってしまいました。
それでも私は、そこに根が生えてしまったかのようにぴくりとも動くことは出来ません。それどころか、わあわあと声を上げて泣いてしまいました。
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