誰が私とグリフィンドール生の会話を聞いていたか、という話をする前に、もうひとつ聞いていただきたい事があります。

シリウスは毎年、私の誕生日をお祝いしてくれていました。

無欲だった私を毎年手を引き連れ出して、星を見せてくれました。今思えば、「これがシリウス。お前が2番目に欲しい星を見せてあげる」だなんて、本当に彼らしく愛おしかったと思います。
その、私にとって一番幸せな日を迎える誕生日が今日でした。
グリフィンドールになったとしても、私とシリウスを繋いでいる今日は彼が私を連れ出してくれると、手紙を出してくれると、そう信じていました。

「誕生日って今日?えっ!本当に?」

ですが私を“一番”をおめでとうと言ったのはシリウスでもお父様でもなく、あのグリフィンドールの女の子でした。

「おめでとう、名前!」

「…ありがとう、ございます。」

「もっと早くに知っていれば私、プレゼント用意したのよ。ごめんね」

あの会話をした日から、彼女はよく話しかけてくるようになりました。そして、シリウスの事を毎日でも聞きたい私は、私からもよく話しかけるようになりました。父上が言っていたような“友達”というものはこういうものなのかもしれないと考えた事もありましたが、会話の内容の9割はシリウスの話でした。

「それで…シリウスには?」

「まだなんです。いつもは、12時きっかりにおめでとうと言ってくれていたのに、今日は目も合わせてくれませんでした」

「…ひどいわ。」


「私は、嫌われていますか?」

私はすっかり自信がなくなっていました。彼に話しかけても無視され、もう何日も、いや何ヶ月も言葉を交わしていません。

「シリウスの気持ちを聞いたことないからわからないけど…私には反抗期の子供のように見えるわよ。意地を張っている、それだけよ」

彼女が私に気を使ってそう言ったのを、きっとそうだと信じたくてたまりません。

「まだ、時間はあるもの!誕生日を忘れているのかもしれないわよ」

「…はい。」

私は彼女に背中を押されて、重たい体でシリウスの元に向かいます。何故か、気乗りはしませんでした。


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