本当はとっくに、婚約者ではありませんでした。
私の父上がグリフィンドールとの結婚を認めなかったからです。組み分けされてすぐ、まだ11歳だった私は嫌だと泣きましたが、勿論私の意見など通りませんでした。婚約はこちらから破棄した事になり、私にはもう誰にも居ない事になります。
それでも私は、シリウスを愛していました。
シリウスがその事実を知らない限り、1秒でも長く、私は彼に…婚約者だと思って欲しかったからです。
たた、それだけの理由でした。
「あなた、シリウスの…」
「はい。あなたは?」
「初めまして、私はリリー。名前よね?シリウスから話は聞いているわ」
私の話をしている。そう聞けば普段なら絶対に話さないグリフィンドール生とも、簡単に口をきいてしまう私です。
「シリウスはお元気ですか?」
「ええ。私もよく話すわけじゃないけど、それでも親友達と楽しくやっていると思うわ」
「そうですか…」
「ねえ、ひとつ聞いてもいいかしら?」
「はい」
「どうして、前は毎日のように来ていたのに……今は来ないの?あっ、もし、答えたくないのならいいのだけれど……」
「…シリウスに、嫌われたくないと思ったからです」
「嫌われる?そんな。あなたは婚約者なのでしょう?」
「婚約者だから愛しているのではありません。シリウスだから愛しているのです。愛している人に嫌われるのは、悲しいし、嫌です」
「……そうね。確かに、そうだわ。」
私がそう言うと、グリフィンドールの彼女はにこやかに笑ってそのまま大広間の方へ行ってしまいました。グリフィンドールにまで婚約者だと思われている事も悪い気はしませんでした。
ですが私は気付きませんでした。このお話を他の人も聞いていたなんて。
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