リドルは容姿端麗だった。そして、クールなのに誰にでも愛想が良くてスリザリン生の高嶺の花だった。
「名前は愛を信じるか?」
「…リドルからそんな事聞かれるなんて、思ってもみなかったわ」
彼は、異様に愛を信じていなかった。
養子に取られる前は施設にいた私だからなんとなく違和感を感じ取れたのかもしれない。笑っていても、腹の奥底では人を…恐れているような。そんなものを彼に感じた。
「君がどんな答えを出すか、それが知りたいんだ。何も特別な意味はないさ」
「そうね。私が思うに、それは“理想”よ」
「……理想?」
彼が少しだけ眉を上げる。
「人々の理想…つまり、そうであって欲しいと願う事よ。みんなそうやって自分の都合のいい解釈をして安心がしたいだけ。俗に言う“神さま”のようなものだわ。信じていればそう感じる時がくるけれど、私たちのように信じていなければそれは必然なんだとしか感じられない」
「私たち、とは…まるで僕も信じていないみたいな言い方は困るな。…はは、でも名前らしい面白い答えだ」
「気に入った?」
「ああ」
「少なくとも、私は信じていないわよ。リドルもそうかと思っていたけど」
困ったような表情をして、彼は答えなかった。
「なら、“自称 愛を信じる”リドルに聞くけれど」
「…。何でも聞いてくれ」
「愛していたら、その人の為に死ねる?」
「……きっと、“その時”がきたらそうするさ。そう選択せざるを得ない時が来たら」
「そう…素敵ね。私には無理だわ」
「そうか」
「ええ、そうよ」
赤黒いその瞳と目が合う。
お互いに小さく笑いあって、私はリドルの肩に頭を乗せた。
変なの。信じていないし、きっとこれから先も信じられないけれど…彼とは一緒に居て落ち着いてしまう。もっと同じ時間を過ごしたいと、望んでしまう…。感じたことのない気持ちが、私は恐ろしかった。
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