煙草を、手に取る。
フーッと息を吐くと、煙と共に胸のつかえが和らぐ気がする。

「吸い過ぎだ」

後ろから伸びてきた手に煙草を取られた。ポトリ、灰が落ちる。

「リドル…」

煙草を奪った主を見つめると、苛立ったように眉をひそめていた。

「もう何本目だ」

そう言いながら、煙草を灰皿に押し当てた彼は、ゆっくりとわたしの顎を撫ぜた。
くすぐったい。

「煙草を吸う奴は口さみしいからだと聞く。…お前はどうだ?」

冷たいリドルの唇がわたしと重なる、ヒヤリとして心地よい。
重なった部分からじわり、じわりと彼の温度がわたしに伝わる。

堕ち、る

灰皿に散らばった吸い殻を見て、わたしはそう思った。




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