「尾浜せんぱーい、大丈夫ですかー?」
「おー、落とすぞー」
一年生が誤ってボールを木の上に上げてしまったらしい。
たまたま通り掛かった尾浜が木に登って、ボールを取ってやる事になった。
一年生にこの高さは危ないからと言って、尾浜は軽々と木に登っていく。
枝に引っ掛かっていたボールを下に落とすと、一年生がボールに群がった。
「先輩ありがとうございました!!」
一年生の笑顔は本当に癒される。と、尾浜から自然と笑みが零れる。
「次からは気をつけろよー」
「はーい!」
枝の上から一年生が走っていくのを見送り、降りようと体重を少し移動した瞬間。
ぐらりと視界が揺れ、重力に従って身体が落下していく。
また酷い怪我になるなぁ。落ちていく身体に16年前のあの衝撃と痛みが蘇る。
目を閉じて、舌を噛まないようにしっかりと歯を食いしばって。
衝撃への準備は万端だった。
「勘右衛門!!」
「!?」
いきなり下から声がして。身体は地面と対面、したはずだった。
「……いってぇ…っ、あと重たい…」
「鉢屋!?」
自分の下には恋人が。
どうやら鉢屋がクッションになって抱き留めてくれたようだ。
「怪我ないか?」
「俺は、平気だけど…鉢屋は……?」
「学園無敗記録があった男だぞ。これくらいなんてことない」
本当に怪我らしい怪我は見当たらなくて、さすが鉢屋だと思う。
よかったと尾浜は安堵した。
「…でも、どうして……」
「遠くから落ちるのが見えてな。天使でも降ってきたのかと思ったんだが、違ったな」
「!!」
鉢屋の視力がいいのは百も承知で。
きっと自分だと見定めて助けに走ってきたのだろう。
(素直に言えないだけか?)
それにしても、天使はないだろう。恥ずかしい奴め。
そう思うと尾浜は鉢屋の肩に顔を埋めた。
「なんだ?」
こいつは恥ずかしい事をさらりと言ったりするから質が悪い。
優しく背中を撫でたり、心配そうな声で聞いてきたり。
心臓破裂しそうなんだよ。気付け。
「…ばーか」
「命の恩人に馬鹿はないだろ、感謝しろよ」
「馬鹿。…好き、ありがとう」
ぎゅっと抱き着けば鉢屋の身体が少し強張ったのが分かった。
口では感謝しろなんて言うが、いざ素直に感謝されたり好意を伝えられるのに慣れてないのだ。
あんまり捻くれてるのも損だと尾浜は常々思っているのだが、言った所で直るものでも無い。
「……おぅ」
不器用な返事と共に頭を撫でられた。
結局、尾浜も捻くれた所や素直じゃない所を引っ括めて鉢屋が好きなのだ。
あばたもえくぼ
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「少年リヤカー」の月白様より
相互記念で頂きました!
甘甘な鉢尾です…すごく甘甘です^^
鉢屋さんがすごく臭いセリフを照れて
言っている様子にニヨニヨします^^
二人共可愛いです/////
月白様、本当にありがとうございました!!!