すりとジュンコが僕の頬に擦り寄ってきた。僕はそれに応える
ようにジュンコの首を撫でた。ちろりとジュンコがうれしそうに
舌を出す。鮮やかな鱗も、時に見せる牙も含めて僕はジュン
コを愛している。
ジュンコだけでなくこの世界にいる生き物、とくに毒を孕んで
いる生き物を愛している。それは対極の美と言っても過言で
はない。鮮やかな衣も身に纏っているのにその体に抱えるの
は毒、なんてすごく皮肉だと思う。

「ねぇジュンコ、君の体の毒を僕が受け入れられるようになっ
たとき僕たちは本当に理解しあえるのかもしれないね」

その言葉はジュンコには難しかったのか、小首をかしげるよう
な仕草をしてジュンコはするりと僕の首から降りていった。そ
して闇の中にするりとその身を投じた。
あ、と僕が言う前にがさりと茂みの中にジュンコは消えてしま
った。困ったな、もう夜も遅いのに、ちらりと空を見ると月は南
に差し掛かろうとしていた。もう寝る時間になるというのにジュ
ンコを散歩に行かせたままだと後から苦情がくるだろう。
僕はため息をついてジュンコが消えていった先に向かって歩
き出した。
夜着のままだとまだ幾分か寒い。はぁ、と手に息を吐きかけ
て藪をかき分ける。かき分けた先に見えたものに僕は思わず
見とれた。
月明かりの下で色とりどりの装束が舞っている。体から手裏
剣を取り出して投げればそれを苦無ではじく。きぃんと冷たい
空気に金属音が響く。また、体術で蹴りを繰り出して腕で受
け流してさらに手刀を喉元につきつける。びゅっと空気を切り
裂く音が聞こえた。よくよく見るとそれらの人々は普段僕らが
先輩と呼んでいる人たちであった。組み手をしていたひとりの
人が僕に気づいて声をかける。

「孫兵、どうした?」
「竹谷、先輩…」

組み手の相手は不破雷蔵先輩で伊賀崎くんどうしたの、と首
をかしげている。空気に圧倒されて何も言えずにいるとしゅる
りと足元に何かが絡みつく。それは先ほど消えたジュンコだ
った。竹谷先輩はそれを見てなんだ、と笑った。

「まぁたジュンコが脱走してたのかー」
「見つかってよかったね」

不破先輩がにこりと笑う。手を伸ばすとジュンコが腕を伝って
首に巻きつく。僕はぺこりとお辞儀をした。

「鍛練中に失礼しました」
「いやいや、じゃあな」
「おやすみ」

ひらひらと手を振って見送る先輩たちにもう一度お辞儀をし
て僕は長屋に戻った。長屋に戻る途中僕はジュンコに話しか
ける。

「ねぇジュンコ、僕もあんな風に毒を孕めるかな?」

そっと呟いたつもりだったけれども思いのほか興奮した声色
が抑えられない。昼間健康的に笑う先輩たちが夜になるとあ
んな風に非情な技術をもって忍となる。本当に刃を心にしま
いこんで、必要なときだけその刃を向ける。まるで、僕の焦が
れてやまない毒虫たちのように。
だからこそ僕はこの学園にいるのかもしれないな、と思いな
がら僕はジュンコに寝ようか、と声をかけて自室へと戻った。


毒をもって毒を制す


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勝手に相互記念で書かせていただきました。
なぎスケさんのみお持ち帰り返品自由です。



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[痴れ者]のたかや様から相互記念で
頂いちゃったんだぜ…
まさか、たかや様と相互出来るなんて
思ってなかった上に、
たかや様の伊賀崎小説が頂けるなんて
夢のようだ!!!いや夢じゃないっ!!!
伊賀崎の色気にやられました(^///^)
竹谷と不破の格好よさに惚れました
本当にありがとうございました!!!



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