プレゼントはわたし





『ジャッカルくーん、英語の宿題見せてー』

朝練終わりでギリギリ教室に滑り込んできたジャッカルに声をかければ、またか・・なんて言いながら見せてくれる。優しい。





「たまには自分でやらないと意味ないだろ」

『やーだよー。ジャッカルがやってわたしに見せてくれればオールオッケー!』

「お前なぁ・・」

『だって英語はちんぷんかんぷんだよ、わたし生粋の日本人だもん』

はぁ、なんてあからさまにため息つくけど同じクラスになってから毎日のように繰り返すこのやりとりが続くのはやっぱりジャッカルが優しいからで。
わたしはそんなジャッカルに片想いしてるわけで。




『もうすぐテストだよやだなー』

「英語以外は柳と張り合うレベルなのにな」

『なんでジャッカル英語できるのブラジルはポルトガル語のくせに!』

「八つ当たりかよ」

『また英語教えてね』

「別にいいけどよ、二ノ宮も国語よろしくな」

『まかせとけ!』

テストは嫌だけど、ジャッカルと勉強会ができるテスト前はだいすきだ。
高校3年生の秋、チャンスはこれが最後かもしれない。









*****






適当に机をふたつくっつけて、お勉強タイム。

「そこの単語の綴りが間違ってる」

『まじか、』

「テスト範囲の英単語くらい覚えとけよ・・」

『ごめんなさーい』

うっかりジャッカルの横顔に見とれてました、なんて言えないから笑ってごまかす。
そりゃあ日本人より色黒だけど、顔はすごく整ってるし頭の形はばつぐんにいいと思うのに、どうしてみんなこの魅力に気付かないのかなぁ・・・。
あ、気付くとライバル増えるからわたしだけでいいんだけど。




『ありおりはべり』

「いまそかり」

『なんだちゃんと覚えてるじゃん。古典はあと助動詞丸暗記すればなんとかなるよ』

「その助動詞がどれだけあると思ってるんだよ・・」

わたしのアドバイスにならないアドバイスにも嫌な顔せず笑ってくれる。
ぺらり、手書きの一覧表を渡せばすごくびっくりされた。



『覚えた方がいい助動詞の一覧表つくったからあげるよ』

「まさか、俺のために・・・」

『優しいでしょ?』

「ありがとな」

ニカッと歯みがき粉のCMオファーがきそうなくらい輝く白い歯を見せて笑う。まぶしい。




「もうすぐ下校時刻だぞ」

「わ!ジャッカル先輩が女といる!」

ぬっと静かに現れたのは柳くんと切原くん。
万年英語赤点ボーイの切原くんにスパルタ教育でもしてたのかな?
そんな柳くんはわたしの恋心を知る数少ない人間だ。
ちょっとちょっと、ふたりの時間をジャマしないでくれます?



『柳くんジャマ』

「うわ、柳先輩に邪魔とか言えんのすげぇ」

切原くんって素直だよね、思ったこと全部口から出ちゃう感じ。


「英語の勉強か・・」

『そうだけど、なに』

「二ノ宮はいつから英語が苦手になったんだ」

『ちょっと!』

「中1のときは俺といい勝負だっただろう」

「は?」

「俺とは学年首位を争っていたのにな」

「え、学年首位?」

『・・・あーあ、なんで言っちゃうかなぁ』

柳くんのばか。
せっかくジャッカルと仲良くなるための作戦だったのにバラすことないじゃないか。
いや、性格悪い柳くんのことだからわかっててバラしたんだろうけど。




「赤也帰るぞ」

「ほんとに邪魔しただけっすね!」

いやちょっと、こんな微妙な空気にしたくせに帰るのか。
わたしの思いも虚しく、柳くんと切原くんは行ってしまった。
柳くんぜったい笑ってたよ。




『あの、えーっと・・・ごめんね?』

「柳と学年首位争うレベルって、相当英語できんじゃねーか」

『ごめんなさい』

「なんで俺に英語教えてなんて言ったんだよ」

どうやらジャッカルは怒ってないらしい。
優しさレベルが神だ。
怒ってはいないけど、呆れられたかな?



『あのね、わたしジャッカルのこと好きだからどうやれば近づけるかなって考えたらこれしかなくて』

「・・え?」

『苦労人のジャッカルくんなら苦労ついでにお願いすればわたしの面倒もみてくれるかなって』

「おまっ・・・さらっと好きとか言うなよ!」

ジャッカルくんだってそれなりにはモテるくせに、好きって言われて赤くなるなんてかわいい。
告白されるたびにこんななのかな。




『ねえジャッカル、勝負しよ』

「なんのだよ」

『今度のテストの英語、わたしの方が点数よかったらわたしと付き合ってくれる?』

「なっ、」

『わたし今度は本気出すから』

「二ノ宮・・」

『テストの結果が貼り出されるのは11月3日、ジャッカルの誕生日だよね?』

「いや、まあそうだけど・・」

『わたしがジャッカルの誕生日プレゼントになりたい』

「なんだよそれ・・・」

プレゼントはわたし、だなんてどこの少女漫画だ。
でも真っ赤になって大きな手のひらで顔を隠すジャッカルはまんざらでもなさそうだ。




『英語ができないのは嘘だけど、ジャッカルのことがすきなのはほんとだよ。信じて』

「疑ってるわけじゃねえけどよ・・」

『明日もまた勉強会しようね。ちゃんと助動詞覚えてきてね』

「お、おう・・」

テストが始まるまであと2日。
ジャッカルの誕生日まではあと9日。













『わたしの勝ちだよ!英語94点!学年3位!』

「お前すげえな」

『これでジャッカルはわたしのものだ!』

成績優秀者の順位が貼られた掲示板の前だとか、人がたくさんいるとか関係ない。
うれしくてジャッカルに抱きつけば、びっくりしつつもしっかり受け止めてくれた。


『誕生日おめでとう!プレゼント、ちゃんと受け取ってね』



\ Happy Birthday Jackal! /







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