とんでもねぇ女





うちのマネージャーはとんでもねぇ女だ。




『ほんっっっとに跡部くんっていつ見ても美しいね!』

「フン、当たり前だ」

『その自信満々なところも俺様なところもいい!』


今日は氷帝と青学と練習試合だ。
主宰校のうちのマネージャーが氷帝と青学を迎えに行ったはずなのになかなか戻って来ないから様子を見に行けば(幸村部長の命令だ)、跡部さんにデレデレべたべたしてるゆずセンパイがいて、いつも通り過ぎてため息がでた。
氷帝の人たちも毎度のこのやり取りに呆れ顔だ。


うちのマネージャーはそれこそ典型的な、絵にかいたようなミーハーだ。
マネージャーの面接のときに『中等部の3年間と高校1年の計4年間うちのイケメンテニス部を見ていたら見飽きてしまった。他校のイケメンに会いたいからマネージャーにしてください!』と堂々と言い放って幸村部長に気に入られたとんでもねぇ女だ。





『あ!越前くん!背のびた?』

「あんたよりはね」

『相変わらずクール!』

通りかかった越前にまでちょっかいかけはじめるセンパイの襟首のところを引っ張れば、ぐえ!なんて全然かわいくねー声がした。




「ゆずセンパイ、そろそろ戻らないと部長に怒られますって」

『えっ、うそ!幸村くん怒ってる?美人は怒った顔も美しいよねー』

「怒られてぇのかよ・・」

氷帝も青学ももう何度も来てるので迷うことはないだろう。
ゆずセンパイを引きずりながらうしろを見ればちゃんと着いてきてるみたいだし、俺まで遅くなればとばっちりくらうのは確実だ。





「ぶちょー、言われた通りゆずセンパイ引きずってきました!」

「ふふ、赤也おかえり。アップしてきていいよ」

心なしか部長に怒られることにわくわくしてるようなゆずセンパイを引き渡して、アップのためにテニスコートからまたグラウンドに戻る。
二ノ宮!たるんどる!と幸村部長じゃなくて真田副部長に怒られる声を聞きながら心のなかでげらげら笑ってやった。







「お疲れさまー。はい、ドリンクとタオル。あ、海堂くんちょっと来て、さっき右足おかしかったでしょ」

ゆずセンパイはよく見てる。
目がたくさんついてるんじゃないかってくらい見てる。
本人はミーハーだからあちこち見てるから気づくと言ってるけど、今まで怪我を隠せたことはない。
仕事はきっちりこなすし、仕事中はぎゃあぎゃあ騒がないし、俺たちの邪魔は絶対にしない。



『海堂くんのテニスまだまだたくさん見たいから、無理はしちゃだめだよ』

「・・・っす」

アイシングしてテーピングを巻いて、てきぱきと処置をする。
あの海堂までたぶらかすなんて。
胸の奥がチリチリと焼ける感じがして思わず地面を蹴った。




「おーおー、お前さん荒れとるのう」

「仁王センパイ」

「ゆずはイケメン好きのミーハーじゃがただのミーハーじゃないぜよ」

「なんすかそれ」

仁王センパイに意味わかんねー、と返せばククッと笑われた。
笑い事じゃねーし。
ただのミーハーじゃないってどういうことなんすか。





「赤也ー!今日もかっこいぞー!」

意味わかんねーって仁王センパイに言ったけど、日吉と試合をしてるとき俺は気づいてしまった。
ゆずセンパイは俺にしか"かっこいい"と言わないことに。





「なんでゆずセンパイ、そんなに他校の奴等が好きなんすか」

『うちのレギュラーは濃いからねぇ・・毎日カルボナーラだと飽きるでしょ?たまにはフレンチとか和食とか食べたくなるじゃん?』

「じゃあセンパイは、俺にも飽きるんすか」

『え、なに赤也どうしたの?』

「いいから!」



『赤也には、飽きない、かも・・・?』

「かもってなんすか、かもって」

『もう!いいでしょ!ほらさっさとコート整備しないと真田くんのゲンコツお見舞いするよ!』

赤い顔してぷりぷり怒るセンパイまじかわいい。










「センパイ!あした俺の誕生日なんすよ!」

『・・・知ってるよ』

「欲しいものあるんすけど」

『えー、ふつう誕生日プレゼント自分からおねだりする?』





「センパイが欲しいんで、よろしくっす」

かっこよく言ったつもりが、俺もすっげードキドキしたし顔が赤いかも。
あーあ、はやく俺のもんになんねーかな。



\ Happy Birthday Akaya! /







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