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ピコーン

From:ブンちゃん
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いまどこにいんの?




ブン太からのメッセージを見て小さくため息をつく。
授業をサボったのはこれが初めてだ。
どうしよう、悩みに悩んだ結果来たのは保健室だ。
保健の先生なら話せばきっとわかってくれるはず。





『っていうことがありまして・・・』

「今時の子ってなかなか過激ね」

『今さらお弁当作らないのもおかしいし、急によそよそしくなったら怪しいし・・』

「そうねぇ・・でも、ゆすられたことは誰にも言うなとは言われてないんでしょ?」

『あ、確かに。言われてないです』

「男はね、頼られたい生き物なのよ。まずは幸村君に相談ね。それにしても二ノ宮さんも幸村君の寝込み襲うなんて大胆ね」

『え、や!お、そうだなんて!』

先生に言われて顔が真っ赤になるのがわかる。
ちがう、あれは襲ったんじゃなくて、出来心っていうか、つい精市くんにキスがしたくなっただけで・・・!





『精市くんに話すってことは、キスしたことも言わないとですよね・・・?』

「ふふ、がんばってね」

先生絶対たのしんでる・・・!





















「どうしたの、ゆずから温室でごはん食べたいなんて珍しいね?」

『あのですね、とっても面倒なことになりまして』

さっきの休み時間に佐々部さんに呼び出されたことを言えば、精市くんの顔が険しくなるのがわかる。




『それで、昨日精市くんが眠ってたときに、つい、その・・キスしたくなっちゃって・・その写真をネタにゆすられてるの』

恥ずかしい。とっても恥ずかしい。
精市くんも、え?って顔になってるし。




『精市くんの顔がきれいで、見てたらついしたくなっちゃって・・ごめんなさい』

「ゆずがキスしたの?俺に?」

『・・・ハイ』

「どうして!起きてるときにしてくれなかったのさ」

『え、そっち?』

精市くんが怒ってる。
佐々部さんじゃなくて、眠ってるときにこっそりキスしたわたしに。
SNSにアップされるのは困るけどその写真俺にくれないかな・・なんて呟く精市くんに、なんか話がおかしい方向にいってないか?と首を傾げる。




「とりあえず佐々部のことはどうにかするよ。ゆずはいつも通り過ごせばいい。丸井にもこのことは伝えるからね」

『うん、迷惑かけてごめんなさい』

「このお礼はゆずからキスしてくれればいいよ」

『・・・がんばります』














「・・・ってことなんだけど」

後輩指導なんて名ばかりで、放課後部室に集合をかける。
意気揚々と赤也をしごきに行った真田と、家の都合で来られないと言ったジャッカルと柳生以外の3人、柳・丸井・仁王にゆずから聞いたことを伝えればいちばん驚いていたのは丸井だった。




「まさかゆずが幸村の寝込みを襲うとはのう・・」

「はぁ?驚くのそこかよ」

「俺もそれには驚いたよ。ほんとかわいい」

「もうゆずとはヤったんか?」

「ふふ、ひみつ」

「ほお、ヤったんじゃな」

「ゆずのそういう話聞きたくねー!!!」

ぎゃーぎゃー言いながら耳を塞ぐブン太に柳は幸村が童貞の確率は限りなく低かった、夏の大会終わりあたりか。なんてピンポイントで当ててくるからうちの参謀はこわい。





「それで、佐々部の弱味のひとつやふたつ、蓮二なら持ってるんじゃないの?」

「ないわけでもないが・・」

珍しく歯切れの悪い言い方にちらりと丸井に視線を流す。




「なんだよい」

「フラれてもなお丸井のことを想い続けてる、といえば聞こえがいいが、自分のステータスをあげるために隣にイケメンを置きたいと友人と話しているのを聞いたことがある。中学時代はサッカー部の日野がターゲットだった」

日野は見事に捕まったが、テニス部の人気には劣ると捨てられたらしい。と続ける柳のその情報はいったいどうやって手に入れてるのか気になるところだ。
ほんとは隠密でもいるんじゃないか?




「じゃあどうして丸井なんだい?」

「日野は完全なる遊びだったが、丸井とは何回か同じクラスになったことがありそこそこ話す仲だったんじゃないか?」

「あー、中1中2と今年で3回目だ」

「いけると勘違いしたんじゃな」

かわいそうな女じゃのう・・と言いながらぽちぽちと携帯をいじる仁王が見せてきたのは、佐々部がスーツの男と腕を組んでラブホテルに入るところの写真だった。




「なんでこんなの持ってるのさ」

「目の前で見知った顔がホテルに入ろうとしてたら撮るのが普通じゃろ?」

「仁王、お前は撮られないようにしなよ」

「俺はそんなヘマはせん」

「でもそのおかげで解決できる。今回は仁王に感謝するよ」

あとで俺に画像送っておいて、と言うと気分が良くなったから赤也の相手でもしてこようかな、と部室を出ていった。





「お前誰とラブホ行ったんだよい」

「さあ、誰とかのう?」

「彼女できたなら言えよな」

「プリッ」

その2人の会話を聞きながら、柳の口角が一瞬あがったのは柳本人しか知らない。




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