37





じりじりと照りつける太陽と、キラキラと光る汗。
センターコートに立つのはあのときと同じ幸村精市と越前リョーマだ。




「約束通り今度は楽しむテニスで君に勝たせてもらうよ」

「ふーん。まあ勝つのは俺だけどね」

立海の3連覇、それはもちろんのことだけど幸村精市の勝つところが見たい。
3年越しの因縁の対決だ。




「ゆず、ちゃんと見ててね、俺が勝つところを」

レギュラーと同じ、スタンドのいちばん前に座ってテニスコートを見つめるわたしに羽織っていたジャージを渡す精市くんの目は本気だ。
あまり見ることのないその瞳にどきっとする。









《ゲームセット ウォンバイ幸村 7-6》


何時間試合をしていたのだろうと思うくらい長い試合、長いタイブレークだった。



ーーー幸村精市が勝った。



ずっと握っていた精市くんのジャージはしわくちゃになってしまっただろう。
そこにぽたりぽたりと落ちる涙がじわりと染み込んでいく。
勝ったんだ、精市くんが勝ったんだ。

3年前、わたしが目を奪われた幸村精市のテニス。
テニスコートに立ったときの自信に満ち溢れた凛とした表情も、試合のあとの悔しさと、どこかほっとしたようなあの表情も、今でもはっきりと覚えている。
でも今は、喜びと満足と、すごく楽しかった!という表情をしている。

駆け寄ったブン太と精市くんに抱きつく赤也と、仁王くんに柳生くんに桑原くん、それを見守る真田くんと柳くん。
みんなに囲まれ顔を綻ばせる精市くん。
うれしい、見届けることができてすごくうれしい。














「ゆず、ありがとう。俺が昨日勝てたのはゆずのおかげだ」

そんな試合から1日経った今日。
精市くんにうちに泊まりに来ないか?とお呼ばれしたので精市くんの部屋でふたりささやかなお祝いをした。




『そんなことないよ、精市くんが毎日練習頑張ってたからだよ』

「毎日ゆずの作るお菓子があったから頑張れたんだ」

『テニスのことはよくわからないけど、少しでも力になれたならうれしいよ』

「全国大会3連覇という夢も果たせた。越前君にも勝つことができた。これでもう背負うものはなくなったんだ」

周りからの期待と重圧。
中学3連覇を逃したときの周りの声は期待はずれの年だったとかひどい声も多かったと聞いた。
高校3連覇のプレッシャーは大きくて重くて苦しかったと思う。




「テニスはまだまだ続けるつもりだ。でも、テニスと同じくらいゆずのことも大切にしたい。俺の誕生日のときに、ゆずのこともっと知りたいって話したのは覚えてるかい?」

『うん・・』

どきん、と心臓が鳴る。
泊まりに来ないか?と言われたときにまさかと思っていた。
この先に続く話がわからないほど鈍感ではないつもりだ。




「恥ずかしがる顔も、すぐに真っ赤になるところも、俺の知らないゆずのこと全部教えて・・?」

優しく髪を撫でられて、優しくキスされて。
抱き上げられたと思ったら精市くんのにおいでいっぱいのふかふかのベッドにおろされて。





『わたしも、精市くんのこと、全部知りたい・・』

もっと、と抱きつくように腕を精市くんの首にまわせば噛みつくような荒々しいキスが降ってきた。
ギラギラと男の目をした、わたしの知らない精市くんが目の前いる。
どきどきと心臓はうるさいのに、もっと見たくてうずうずする。




『すき・・』

無意識に溢れた言葉もぜんぶ吸いとられて、わたしは精市くんに身を委ねた。




















「目が覚めた?」

ゆっくりと目を開ければ、目の前にはやわらかく微笑む精市くん。
わたしが目を覚ますときはいつも精市くんがいる気がするなぁ・・なんて呑気に考えるけど、さっきまでの行為を思い出してじわじわと顔が赤くなるのがわかる。
恥ずかしくて痛くて苦しかったけど、それ以上にしあわせだった。




「身体つらくない?」

『だいじょうぶ・・』

「最後まで優しくしてあげられなくてごめんね」

『ううん、精市くんは優しかったよ』

もう限界だ、なんて小さく溢して激しく揺さぶられて。
薄れゆく意識のなかで見た精市くんは色っぽくて男くさくてわたししかこんな精市くんを知らないんだって思ったら自然と笑みが溢れた。



『すきな人とひとつになることが、こんなにしあわせなことだって知らなかったなぁ・・』

へらり、と笑って見せれば、右手で顔を覆ってしまった精市くん。
どうしたの?って聞くよりも早くわたしの首筋に吸い付いた精市くんの髪の毛がくすぐったい。


「ね、もう1回シよ」




prev next

back home


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -