◎21
「なんなの?なんで俺たちばっかりこんなに忙しいわけ?みんな動きが悪すぎるよ、手際悪いんじゃない?」
『仁王くん幸村くんがおかしい』
「こっちがホンモノの幸村じゃ」
MAXご機嫌ななめの幸村くんはにこにこしてるのに、目が笑っていない。
事の発端は2週間前に遡る。
「多数決の結果、2‐Dは執事喫茶に決まりました!」
ちょっと困ったように微笑む幸村くんと、無表情の仁王くん。
それもそのはず、今年の文化祭のクラスの出し物は幸村くんと仁王くんありきで決まった執事喫茶。
聞いた話によると、中学のときに真田くんと柳生くんは執事喫茶をやったことがあるらしい。
真田くんがやるなんてすごく意外だ。
『ふふふっ』
「なに笑ってるの」
わあ、幸村くんご機嫌ななめだ。
やりたくないって言ってたもんね。
『わたしは幸村くんの燕尾服姿見てみたいな?かっこいいだろうな〜』
「・・・・・」
『仁王くんヘルプ』
「俺もやりたくなか」
『まあ、どうなるかは目に見えてるよね』
「なんで知らん女にご奉仕せなならんのじゃ」
『お菓子だしてちょこっとお話するだけだよ』
「そのちょこっとが面倒じゃ」
そんなこんなで不機嫌なふたりをよそに、クラスの女の子たちは幸村くん仁王くんの燕尾服姿が見れるとあってテンションが高い。
他にもサッカー部や野球部のイケメンくんたち給仕担当はみんな燕尾服を着るらしい。
わたしは裏方お料理担当だから制服のままでいいだろう楽チンだ。
・・なんて思っていたのに、なぜかわたしまでメイド服(しかもコスプレ用の丈の短いやつ!)を着るはめになってしまったのだ。おかしい。
なんでも、給仕以外でもホールに出る可能性のあるひとはみんな燕尾服かメイド服を着たほうが雰囲気がでるとかなんとか。
誰だそんな余計なことを言ったのは。
「いったい何枚整理券出してるわけ?さばける人数わかってるの?3000円以上注文したらチェキが撮れるとかなんなの」
『幸村くん落ち着いて』
「1日でこんなに写真撮られたのは初めてだよ」
3000円以上の注文で好きな給仕係と1枚チェキが撮れるシステムを導入したのはクラス1のお調子者の野球部の原田くんだ。
原田くんはナルシストではないけど、自分がそこそこ人気があるってわかっててこのシステムを導入したんだからすごいと思う。
『幸村くんあーん、』
キッチンに戻ってくるたびに愚痴をこぼす幸村くんの口にクッキーをひとつ押し込む。
「・・・おいしい」
『あと1時間で休憩だから頑張ろう?』
これ3番テーブルにお願いします、と幸村くんの持っていたトレーに注文のお菓子を乗っけて見送ればさっきより"いつもの"幸村くんに戻っていた。
まあお客さんの前で不機嫌さ出すような人じゃないんだけどね。
prev next
back home