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朝、わたしが登校するといつもは朝練でギリギリに来る幸村くんが頬杖をついて外を眺めていた。



『おはよう幸村くん』

「明日、俺の誕生日なんだよね」

『え!そうなの!?』

おはようのかわりに返ってきたのは、あしたが幸村くんの誕生日だということ。
知らなかった・・・!




「ゆずと誕生日近いね」

『え、わたしの誕生日知ってるの?』

「前に丸井が言ってたからね。俺の方が15日だけ年上だ」

『幸村くんお兄ちゃんだ』

こんなにかっこいいお兄ちゃんがいたら、毎日しあわせだろうなぁ・・。




「それでね、ゆずから誕生日プレゼントほしいなって」

『ん?わたしにできることならなんでも言って?』

意外(?)と幸村くんは自らプレゼントを要求するスタイルだったなんてびっくりだと思いながら、なにが欲しいのかな・・なんて考える。
幸村くん水彩画描くから絵の具とか?
でもそれくらい自分で買うよなぁ・・・。




「ゆずの作ったお弁当が食べたいな」

『えっ!そんなことでいいの?』

「俺だけのために作ってほしいんだ」

『うん、わかった。とびっきりのお弁当作るね』

そんなことを言われたら頑張るしかない。
幸村くんの好きなものを聞けば、お肉よりお魚派らしい。
いつも作るブンちゃんのお弁当は肉!肉!肉!なのでどんなものにしようか、と悩む。
よし、今日は図書室でお弁当の本を見てみよう。









*****




2週間くらい前に見たような光景だ。
幸村くんの誕生日ということで、すれ違う度におめでとうと言われそれに笑顔でありがとうと答える彼はやはり神のようだと思いながらふたり分のお弁当を持って歩く。
外はまだ寒いので今日は幸村くんお気に入りの温室でランチの予定だ。



「ふう、」

『幸村くん人気者だね』

ちょっと疲れたようにイスに座るとため息ひとつ。
教室からここまで30人くらいに声かけられたんじゃないか。
そしたら疲れるのも仕方ないよね。




『幸村くん、お誕生日おめでとう』

もう聞きあきたかもしれないけど、と笑いながらお弁当を渡せば「ゆずからは特別だよ」なんて言うからちょっとだけ頬が赤くなる。




「すごい・・・!」

『幸村くんのために、がんばってみました・・・あは』

お弁当箱のふたを開けたまま目を輝かせる幸村くんはちょっとかわいい。
ぶりの照り焼き、白身魚の竜田揚げ、あとは定番のたまご焼きや彩りにプチトマトやマカロニサラダ。
デザートはフルーツたっぷりのミニタルトをチョイスした。




「すごくおいしいよ、ありがとう。ほんとに嬉しい」

普段あまり作らない和食の味付けに不安があったので、おいしいと言ってもらえてひと安心だ。
やっぱり自分が作ったものを喜んでもらえるのはとても嬉しい。



「毎日これを食べてる丸井がうらやましいな」

『中学のときからだから、ブンちゃんはもう飽きてるかもしれないよ』

「丸井は贅沢だなあ」

『幸村くんが良ければわたしいつでも作るから言ってね?』

「ありがとう」

それから他愛のない話をして、気付けばお昼休みが終わるまであと5分だ。




「ねぇゆず、月に1回でいいからこれからも俺にお弁当作ってくれないかな?」

『いいよ?』

毎月5日は幸村くんとお弁当の日。
もうすぐ進級してクラス替えもあるから、幸村くんと違うクラスになったら寂しいなって思ってたから幸村くんの提案はすごく嬉しかった。
月に1回は必ず幸村くんと会えるなんて・・・!
にやける頬を自分の手で抑えようとする前に幸村くんの両手でほっぺたを挟まれた。




「ふふ、ゆずにやけてるよ」

『うれしいんだもん』

「へんな顔」

『どうせ可愛くないですよー』

「可愛くないとは言ってないだろ」

どきん。
最近幸村くんと居るとたまに胸がどきんとすることがある。
恥ずかしいような嬉しいようなむず痒いような。
赤くなる頬に少しだけあがる熱。



『恥ずかしいので離してください』

「やだ」

きょうの幸村くんはいつもより少し可愛く感じた。




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