◎08
幸村くん→弦一郎→柳生くん→ブン太→赤也→ジャッカル→蓮二ときたハルトのお泊まり会も無事に終了した。
弦一郎とは剣道を、柳生くんとはリアルなお医者さんごっこを、ブン太とはケーキ作りを、赤也には海に連れていってもらい、ジャッカルくんとは本格的なラーメン作りを、蓮二には縁日に連れていってもらったらしい。
わたしひとりではとてもできなかった、充実した夏休みになった。
ハルトの部屋には新しく幸村くんに買ってもらったテニスラケットと、弦一郎が買ってくれた竹刀が置いてある。
「まーくんもなかまなんでしょ?」
『え?』
「あかやにいちゃんがいってた!」
仲間、というのはもちろん立海テニス部のメンバーってことだろう。
赤也め、余計なことを言いやがって。
「どうしてまーくんのおうちにはおとまりないの?」
『ハルトはお泊まりしたいの?』
「したい!まーくんにてじなおしえてもらうの!」
『でも隣の部屋だよ?』
「だめなの?」
うーん、と悩む。
出来る限りハルトの願いは叶えてあげたいけれど、雅治にお願いするというのはなかなかハードルが高い。大問題だ。
『考えておくよ。お仕事忙しいだろうしね』
そう言って、わたしはハルトからのお願いから逃げた。
*****
『え、出張?わたしが?』
「そうだ、申し訳ないがどうしても俺は行くことができないので代わりにゆずに頼みたい」
『で、でもわたし、資格とか持ってないし・・・』
「それは問題ない。俺が月1で行っている大阪の跡部の子会社に書類を取りに行き、漏れがないかをチェックして東京の本社へ届けてほしい。書類のチェックはいつもしているから慣れているだろう」
『そうだけど・・・日帰りじゃだめ?』
「子会社との約束が18時だから遅くとも15:00発の新幹線に乗らなければ間に合わないので幼稚園の迎えには間に合わない。それに最終の新幹線は21:33発だ、それまでにあの膨大な量の書類チェックが終わると思うか?」
『・・・・・思いません』
はあ、とため息をこぼす。
これは断れないパターンだな。
いつも融通きかせてもらってるから、蓮二のお願いにも答えてなげないと。
『わかった、行くよ』
「すまないな」
まずはハルトの預け先確保だ。
『そっかー、わかった。ううん、ありがとう』
電話を切るとまたため息がでた。
こんな時に限ってみんな予定があってハルトを預けることができなかった。
幸村くんなんていまアメリカにいるらしい。
最後の手段、夜間保育所かな・・・なんて思いながらハルトのお迎えのためにマンションのエントランスから歩き出した。
『あっ、』
「おう。今からお迎えかの」
ちょうど仕事終わりの雅治と鉢合わせ。
トランクを転がしてるから海外に行ってたのかな。
そういえば最近顔見てなかったし・・・ってなに考えてるんだわたしは。
「なんじゃ浮かない顔して」
『えっ、あ、わかるの・・・?』
「そりゃあな。何年おまんを見てきたと思っとるんじゃ」
なんていうことを言ってくれるんだ。
胸がドキン、と高鳴る。
『あ、あのね、蓮二に出張たのまれたんだけど、ハルトの預け先が見つからなくて・・・』
「出張っていつじゃ」
『今度の火曜日なんだけど・・・』
「俺が預かっちゃろうか」
『えっ、』
「他にあてもないんじゃろ?ちょうど今度の火・水は休みじゃし」
思わぬ提案に驚いてしまう。
どうしよう、ハルトは泊まりたがってるけど甘えてしまっていいのだろうか。
また拒否されたら、今度はハルトまで傷つけてしまうことになるかもしれない。
でも、ハルトをひとりにはできないし夜間保育所よりは知ってる人の方が安心するのかな。
『・・・お願い、します・・』
「おん、詳しいことはまたメールして。アドレス変わっとらんから」
『わかった。ありがとう』
これはハルトのため。
ハルトのお願い叶えただけでわたしが甘えた訳じゃない。
そう自分には言い聞かせた。
To:柳 蓮二
From:仁王 雅治
Title:
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ありがとさん
To:仁王 雅治
From:柳 蓮二
Title:
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なんのことだか
俺のために跡部にまで手を回すなんて、やっぱり参謀は俺の味方じゃ。と笑えばハルトのためだ、返ってきた。
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