きゅんって音がするらしいです





大学に入って初めての試験はお互い勝手がわからなくて連絡もそこそこに、レポート提出やら忙しくて会うことは叶わなかった。
ほんとは駅前で待ち合わせだけど、1秒でもはやく会いたくて。

見慣れた校門の前で腕時計で時間を確認しながらきっとりっちゃんと歩いてくるだろうと思っていた俺の予想は悪い意味で裏切られた。




「これからお茶とかどう?」

『ごめんね、約束があるの』

「ノート見せてくれたお礼にさ」

『お礼なんていらないから・・・あれ、精市くん!?!?』


「お疲れ様。俺のほうがはやく終ったから迎えに来たよ」

『連絡してくれればよかったのに』

「ゆずに悪い虫がついてるんじゃないかと思ってね」

ギロリ、テニスの試合をしているときのような鋭い視線を向ければ、また今度なんて言ってそそくさと走っていってしまった。




「あの男・・・」

『和田くん?授業がいくつかかぶってて、よく声かけてくるんだよね』

「そう・・・変なことされてない?」

『うーん、たまにちょっとしつこいなって思うときはあるかも』

『気を付けてね。ちゃんと困ったら俺とかりっちゃんに言うんだよ。ゆずには危機感とか警戒心とかそういうものがないんだから」

『わ、失礼なこと言うなぁ』

「ほんとに。心配してるんだよ?」

きゅ、と手を握られてああこの手の感触久しぶりだなぁ・・なんて。



「ねぇ、この前新しくできたカフェに行く予定だったけど、また今度って言ったら怒る?」

『ん?どこか行きたいところがあるの?』

「ゆずの部屋。ゆずのこと一人占めしたいんだ」

いつも通りなんだけどいつもより少し強く握られた手にひかれて、口数が少なくなった精市くんと向かうのはわたしの家。
もちろんノーなんて言わないけど、返事を聞く前に歩きだした精市くんに余裕のなさを少し感じた。















『精市くん?疲れない?重たいでしょ?』

「疲れてないしゆずは軽いよ」

部屋についてからかれこれ1時間程。
精市くんの膝に乗るかたちでバグをされたままがっちりホールドされている。
時折すんすんと髪のにおいを嗅がれたり(恥ずかしい)、首筋をべろっと舐められたり(くすぐったい)





『どうしたの?きょうはあまえんぼさんだね』

「ゆずの前だけだよ。あまえんぼさんな俺は嫌い?」

『ううん、どんな精市くんのことも好きだよ』

「俺も好き。離れていかないでね」

『なに言ってるの、精市くんこそかわいい女の子たくさんいるでしょ?』

「俺はゆずしか見てないから」

『わたしだって精市くんしか見てないよ』

「でも変な男に付きまとわれてたでしょ」

『和田くん外部だから立海のことまだよく知らないみたいで』

「優しくするのも俺だけにして」

『もう、それはできないよ・・っ、あ!』

急にぢゅ、と吸い付かれてびくっとすれば「虫除け」と満足そうに笑う精市くん。
髪の毛を耳にかけると見えるギリギリの位置につけられた初めてのキスマーク。
うわぁ、たまにりっちゃんがつけてるのは見るけど、なんだかどきどきしてしまう。





「今日泊まってもいいかな」

『お母さんもそのつもりだったと思うよ?』

「ふふ、なんだか認めてもらってるみたいで嬉しいな」

『お父さんもお母さんも精市くんのこと気に入ってるよ』

精市くんが来た日はごはんがいつもより少しだけ豪華になると前にブン太も言ってた気がする。






「あ〜〜〜もう、」

『え、なに、どうしたの?』

ぐりぐりと額をこすりつけてくる精市くんはまるで子供みたいだ。
そういえばブン太のいちばん下の弟も眠いときこんなかんじだったな、なんて。




『精市くんもしかして眠い?』

「ねむくない」

ほんとに子供みたいだ。




「あっ!」

精市くんの膝からおりてとなりに座る。



『今度はわたしの番だよ。時間もあるしひざまくらしてあげるから少し寝たらどうですか』

ぽんぽん、と太ももを指せばすぐにころんと寝っ転がってきた。
ふわふわの青い髪がくすぐったい。




「なんかいいね、こういうの」

『どさくさに紛れてお腹ぐりぐりしないで』

「ちょっと太った?」

『落とすよ』

「うそうそ、夜が楽しみだな」

『やっぱり今は起きてて夜は早寝しようか』

「おやすみ」

しばらくするとすうすう聞こえてきた寝息に、愛しさが込み上げてきてちらりと見えた耳にキスを落としたのはわたししか知らない。





***
《別々の大学に進学して幸村くんが不安になる話 (エメラルドライン/夢見るカピバラ様)》
リクエストありがとうございました!
上手に甘えてますか?どちらかといえば甘えさせてもらってるみたいになってしまいました笑






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