甘くしびれるかなしばり





目が覚めたら、真っ暗な部屋の中だった。




『ここ、どこ・・・?』

頭がもやもやする。
だるさの残る体を起こせば、身に付けていたのはギリギリ下着が隠れるくらいの長さのワイシャツ1枚。
手首は両手まとめて縛られていてジャラ、と重たい音をたてる鎖が首に繋がっていた。




『なに、これ・・・』

何が起こっている?
まだはっきりしない頭を必死に動かして必死に考えるがまったく思い当たる出来事がない。
今日は精市と一緒に帰る日だったから、部活が終わるのを教室で宿題をやりながら待っていたはず。
途中、喉が乾いてお昼に精市にもらった紙パックのリンゴジュースを飲んで。
気がついたらここにいた。




「おはよう、ゆず」

『せい、いち・・・?』

パッと明るくなった部屋に眩しくて目を細める。
声がした方をじいっと見つめれば制服姿でマグカップを2つ持った精市がいた。




『なんで・・・?』

「喉、かわいてるだろう?」

『・・・いらない』

「警戒してるの?大丈夫、何も入ってないよ。ゆずの好きなミルクティーだ」

『どうして・・?なんでこんなことしたの・・?』

コトン、とサイドテーブルにマグカップを置くと強く強く抱き締められる。
精市の体重でギシ、と音をたてるベッド。
ここは精市の部屋だ。





「ゆずがいけないんだよ。今日クラスの男と話をしていただろう?」

『あれは、委員会のことで、』

「だめだよ、あんな近い距離で俺以外の男と話をするなんて」

『せい、いち・・・』

「好きだよ。ずっとここに閉じ込めておきたいくらい」

こつん、と合わせられたおでこから精市の体温が伝わってくる。
いつもは安心する温度のはずなのに。





「ふふ、すごく似合うね」

つつ、と首筋をなぞる指が首輪に触れる。



『これはずして?』

「それはできないな」

ごめんね、といつもの優しい目をして言う。
わたし用にと買ってくれたピンクにうさぎのイラストが描かれたマグカップ。
ミルクティーをひとくち含むと、そのまま口づけられた。



『んんっ・・』

飲みきれなかったミルクティーが口端から零れて落ちる。
いつもの、精市が淹れてくれる優しい味がした。





「ふふ、かわいい。濡れちゃったね」

ペロ、と舌で舐めあげると甘いねと笑うから、わたしがこんな格好で縛られてる以外はいつもの精市で、それが逆にこわい。
とさ、とベッドに押し倒されると額に瞼、鼻の頭とキスの雨が降ってくる。
耳たぶを甘噛みされるとこわいはずなのにだんだんと甘い雰囲気に流されそうになってしまう。



『やだ、やめてよ・・』

「好き、好きだよ。俺を拒まないで」

プツリプツリ、ゆっくりと3つめまでボタンを外されて下着が晒される。
ふと今日のブラジャー、かわいいやつだったかな?なんてとんちんかんなことが頭に浮かんだ。



「こっち集中して」

ちゅ、ちゅ、と首筋から鎖骨から精市の唇が這う。
がり、と噛まれた鎖骨が痛くて思わず眉を寄せた。



「ゆずはおいしいね。どこを舐めても甘い」

精市の手がブラジャーを押し上げてやわやわと胸を揉む。
いじわるな指先が弱いところを掠めて思わず声が漏れた。



『ねぇ精市、これはずして?わたしも精市のこと抱き締めたいよ』




























『って夢を見たの』

精市の部屋のソファに座って、いつものミルクティーを飲みながら話すのは今日見た夢の話。



「なに、ゆずって欲求不満だったの?」

『そうじゃなくて!!!』

ふふ、といつものように柔らかい笑みを浮かべる精市に心のどこかで安心した。


「ゆずもわかってると思うけど俺が嫉妬深いのは確かだ。でも一言も俺以外の男と話をするなっていうのも無理があるからね、俺はそんなことしないよ。ゆずのこと信頼してるからね』

『精市・・』

「あ、ゆずがしてほしいって言うなら考えるけどね?」

『いりません!!!』

「ねえ、こっちの続きはしなくていいの?」

するりと首筋をなぞると、ぐいと伸ばされた襟元から見えた鎖骨にかぶり、と歯をたてる。



『いたっ・・』

「俺はしたいんだけどな?」

ね?と言われれば断れない。
わたしは精市のお願いには弱い。
あんな首輪や鎖がなくたって、だいすきな精市から離れることはできないのだ。





『わたしのどこが好きなの?』

「そうだなぁ・・・全部って言ってもゆずは納得してくれないだろうから、うーん・・強いて言えば俺のことが好きすぎるところかな」

『ばか・・!』

どうやらわたしの想いは精市につつ抜けだったようです。





***
《幸村くんに監禁されて酷いことをされる(夢オチ/ハッピーエンド)》
リクエストありがとうございました!
memoまで読んでいて下さって嬉しかったです。





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