07





「ゆず、今日はなにか予定はあるか?」

縁側でごろんごろん。
見ての通り暇をもて余してるわたしに予定はあるか?だなんて愚問だよ蓮二さん。





『見ての通り暇です』

「そうか。今から弦一郎が来るんだが構わないか?」

『わたし邪魔なら出掛けてくるよ?』

「いや、気を遣わなくていい」

じゃあお茶の用意でもしておこう、と立ち上がって食器棚からお客様用のコップとコースターを出そうと思ってぴたりと止まる。




「ふっ、弦一郎は温かい茶を好む。湯呑みと、ティーカップもひとつ出しておいてくれ」

『ティーカップ?来るのは真田さんだけじゃないの?』

聞いても蓮二さんはにやりと口角をあげるだけで教えてくれない。
まったく、秘密主義だな。





「それよりその格好のままでいいのか。寝癖もついているぞ」

『わ、さすがに着替えてきます』

手ぐしで髪をなでつけながら、中学時代のハーフパンツに適当なTシャツ姿の自分を見て慌てて自分の部屋にかけあがる。
だらしない格好をしていたら、きっと真田さんにたるんどる!って怒られちゃうんだろうな。こわい。














「よく来たな、ゆっくりして行ってくれ」

玄関のチャイムに出迎えに行った蓮二さんと真田さんの話し声が聞こえる。
あともう一人、男の人にしてはちょっと高めの優しい声はだれだろう?






「邪魔するぞ」

『あ、真田さんお久しぶりです』

いつ見ても真田さんはがっちりしてるから大きく感じる。
ポロシャツの胸板がちょっとぴちぴちで思わず笑いそうになった。
そんな真田さんの後ろからひょっこり顔を出したのは、あの、噂の。







『え、え?えーっっっっ!!!』

「この前の図書館ぶりだね、ゆずちゃん」

『なんでっ』

「芸術作品のような彼がここにいるのかとお前は言う」

『ちょっと蓮二さん!本人の前で言わないでよ!恥ずかしい!』

「この前柳と会ったことを幸村に話したら、幸村も久しぶりに会いたいと言っていたから誘ったのだが・・」

『真田さんはなにも悪くないです!』

おかしそうに笑う芸術作品のような彼(ゆきむらさん?)と蓮二さんにひとり慌てるわたしとだめだったのかと言う真田さん。
なんなんだこの状況は。





『・・・じゃあ、蓮二さんは知らないふりしていつもわたしの話を聞いてたんだ。言ってくれればよかったのに。蓮二さん性格わるい』

「俺のチームメイト、という概念なしに見ているゆずの話がおもしろくてな」

「ごめんね?俺が秘密にしてって蓮二にお願いしたんだ」

『幸村さんが?』

「たまに図書館で見るゆずちゃんの反応がおもしろくてね?ネタばらししたらつまらなくなっちゃうだろう?」

『幸村さんも性格わるい』

「あははっ、よく言われる」

図書館で目があったときは、あんなにどきっとしたのに。
今目の前でこんなにげらげら笑っているなんて。
あのとき真っ赤になった自分が恥ずかしい。






『信じられるのは真田さんだけだ』

むう、と頬を膨らませながら真田さんにもらった水ようかんを食べればほんのり甘くておいしくて頬が緩んでしまう。




「フッ、怒ってるのか喜んでるのかわからないな」

『真田さんの水ようかんがおいしいのが悪い』

「気に入ったか?それならまた今度持ってきてやろう」

『わーい、ありがとうございます』

まったくわたしも、水ようかんひとつでご機嫌だなんてちょろいな。でもおいしいのがわるいんだ。




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