◎04
『生徒指導講話ってなにやるの?』
「全校集会みたいなものよ。今日は警察の人が来るみたいだけど」
生徒指導講話なんて堅苦しい名前だからなにをやるのかと思ったら、ただの全校集会だったなんて。
全校集会って退屈なことが多いからなにやるんだろ〜と思っていたらまさかの護身術。
たしかに立海は県外から来てる人も多いから身に付けておいて損はないかも?
変質者とかもいるからね。
真田さんという警察官のひとは、蓮二さんくらい背が高くてむきむきで強そうな人だった。
おまけにエリートらしい。
あんな人に追い掛けられたら犯人も怯むのではないかと思うくらいに迫力がある。
男子がちょっとふざければ「たわけが!真面目にやらんか!」なんてものすごく大きな声で注意するし話し方は古風だし、見た目若そうなのに一体いくつなんだろう?
たわけってなに?
簡単にできる護身術を教えてもらい、「己の身を守るのは己自身だ。」という真田さんのありがたいお言葉で生徒指導講話は終わりになった。
あとで蓮二さんに試してみようかな。
『あれ、蓮二さん来てたの?』
生徒指導講話のあとはHRですぐ解散になった。
部活のないわたしはいつも通りひとりで校門まで歩けば、そこには見慣れた姿があった。
「ああ、今日の講話は保護者の参加も自由だったからな。それに・・」
『真田さん?』
「む、お前は・・・」
なんで蓮二さんが真田さんと立ち話なんてしてるの。
そんなわたしの心の声を察してか、「立海には俺の知り合いが多いと言っただろう」と笑う。
『真田さんは警察官だから立海じゃないじゃん』
「共に3連覇を成し遂げた仲間、といったところだろうか」
『えー!真田さんテニスやるの!?ぜったい剣道だと・・・』
似合わない。
いや、似合わないなんて言ったら失礼だと思うけどイメージがまったくない。
「ほう・・あの時の泣き虫がこんなに大きくなったのか」
『え?わたし真田さんに会ったことあるの!?』
「まだ3歳くらいだったか。姉さんに連れられてよく試合を見にきていたからな」
『えー、そうだったんだ』
「ゆずはジャッカルにも会ったことがあるし、他にも当時のメンバーとはよく遊んでもらっていたな」
わたしは覚えてないけれど、蓮二さんと真田さんの顔を見ればわかる。
すごくたのしかったんだろうな。
なんで覚えてないんだろう、わたしとてももったいないことしてるな。
『今度桑原先生に蓮二さんと真田さんのこと聞いてみようかな』
「それは俺も聞いてみたい。ジャッカルが当時の俺たちをどう思っていたのか興味深いな」
『それは桑原先生がかわいそうだよ。本音が言えないじゃん』
「お前は随分ジャッカルのことを慕っているのだな」
『桑原先生はいい先生ですよ。運動が苦手なわたしにも優しいし出来るまで付きっきりで教えてくれます』
「柳と同じ血が流れてるのに運動が苦手なのか」
『半分は柳じゃなくて二ノ宮の血ですから』
どれくらい話していただろう、そういえばなんかすっごく目立ってる。
入学式でもこうだったの忘れてた。
『蓮二さん』
「目立つからそろそろ帰ろうとお前は言う」
「では俺はそろそろ行くとしよう」
「ああ。今度家にも寄るといい」
「うむ、邪魔させてもらおう」
真田さんと校門のところでさようならをした時には教室を出てからすでに1時間も経っていた。
そんなに長い時間立ち話していたなんて。
でもこれで、蓮二さんのお友達2人制覇だ。
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