もしも君なら


 
 
 
『だからここの冠詞はtheになるの。わかった?』

「…つーか、冠詞ってなに?」

『…。aとかtheとか名詞の前につけるやつだよ。たまに後ろにつく時もあるけど…』

「ふーん」

オレンジ色の太陽が照らす放課後の教室。
課題のプリントを二ノ宮に教えてもってっけど、集中なんて出来ねぇし、くるくるペンを回す。


顔近いっつーの!






『あと1枚だよ。もう、毎日居眠りするから…』

ぺら、とぺーじをめくる二ノ宮の指先に、つい目がいってしまう。






『切原くんどうかした?』

「んあ?」

『ぼーっとしないの!』

む、として俺のおでこにデコピンしてきたけど、ちっとも痛くねーし、むしろ嬉しくてにやにやしちまう。








『I wish I were・・・切原くんは、「もしも××になれるなら」何になりたい?』

ここは重要だよ、とプリントにマーカーを引きながら問いかけてくる二ノ宮に、少しだけうーん、と考える。











「二ノ宮の好きな人」

すんなりと口から出た。









『え・・?』


「だーかーらー!二ノ宮の好きな人。・・・・・二ノ宮は?」

俺、余裕だぜって雰囲気を出して二ノ宮に同じことを聞き返す。
内心、息が止まるんじゃないかってくらい心臓がばくばくしてる。









『それなら…それならあたしも、切原くんの好きな人になりたい』

赤い頬を隠すように俯いて言う二ノ宮。







やべぇ、ちょうかわいい!








「こっち向けよ」




『・・・恥ずかしいし』

「何を今さら。ずっとこの距離で話してたじゃん」



『だ、だけど・・っ、』

この先の言葉はいらねーし、







「うるさい口はしばらく黙ってな」



『い、今、きす、・・し・・・っ』



「ほら、もう帰ろーぜ」

口をぱくぱくさせて、目はぱちぱちさせる二ノ宮に、ふっと笑う。





『プリント・・・』

「なんとかなるっしょ」

ひょいっと2人分のかばんを左手に、二ノ宮の手を右手に取って教室を出た。







I wish I were ...

願わくば、君のとなりに。なんつって。






back home


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -