step3 弟side



最悪だ。
乳首だけでイった日から、乳首を刺激しないとイけなくなった。
死にたい。

乳首でイくなんて普通じゃない。
なんて言うか、変態的なイメージがある。
そう思っていても事ある事に乳首が疼いて触らずにはいられなくなる。
まるで麻薬みたいだ。
欲しくて欲しくてたまらなくなる。
麻薬なんてやった事ないけど。
駄目だ、それ以上触るな、と自分に言い聞かせても無駄で、結局俺は毎日乳首を弄って乳首でイっている。

初めて違和感を感じたあの時、何がなんでも無視していればこんな事にはならなかったのだろうか。
しかしそう思ってる今も俺は早く家に帰って乳首を触りたくてウズウズしてしまっている。
はあ、ほんとサイアク……。





家に帰ると玄関に親父のじゃない男物の靴。
…また兄貴が帰ってきてるのか。
そういえば忘れ物がなんとか言ってたっけ。
まあ俺には関係ないけど。
おそらくリビングにいるだろう兄貴に鉢合わせないように直で自分の部屋へ向かう。


「…おい、俺の部屋で何してんだよ」
ドアを開けるとすぐ目の前に兄がいた。
勝手に入ってんじゃねえよ、睨みつけてもちっとも堪えてなくて腹が立つ。
舌打ちして兄貴を押しのけ部屋に入る。
「……なんなんだよ。早く出てけ」
兄貴はドアの所につっ立ったままじっとこちらを見ていた。
だからこないだも思ったけどその目なんだよ!
こえーよ!
「お前オナニーしすぎじゃないか?すげー臭うぞこの部屋」
「うるせー死ね禿げ!」
ありえないありえないありえない!
何を言うかと思えば!
俺は力の限り兄貴を押しやって思い切り部屋のドアを閉めた。

臭うって何がだよ。
ちゃんと毎日換気してるしファ○リーズだってしてる。
自分でも自覚があっただけに兄に指摘されるのは死ぬほど恥ずかしかった。

…窓開けとくか。
いつもはオナニーしてから開けるんだけど今日は兄貴がいるから出来ないから。
って、出来ないってなんだ出来ないって。
そんなしたいけど出来ないみたいな。
しなくていいんだ乳首でオナニーなんて…。

さっき隣の部屋のドアが閉まる音がしたから兄貴がそこに居るんだろう。
兄貴が出ていってからすっかり物置状態なのに一体何をしてるんだろうか。

おっと、窓開ける前に着替えてしまおう。
窓全開で着替えとかまずいだろ。
男だって裸を見られたら恥ずかしいんだ。

そう思ってシャツのボタンを開いていたら、手が勝手に動いて乳首へと向かった。
「え…なんで……」
なんて思ってる間にも俺の手は乳首を弄り出した。

カリカリと先端を引っ掻いたかと思うと下からすくい上げてそのまま体に押し込むように潰す。
もう片方は指の腹で転がしたり側面を摘んで引っ張ったり。
どっちもすごく良くてそのまま快楽に浸りそうになったが隣に兄貴がいる事を思い出しハッとする。

何してるんだ。早くやめないと。
そう思うも俺の手は乳首を弄り続ける。
あ、捏ね回すの気持ちいい……じゃなくて!
たったそれだけの刺激なのに俺のちんこは完全に臨戦態勢になっていた。
こんな事で興奮する自分の体に嫌気がさしていると、急にガクッと足から力が抜けて床に膝をつく。
そこで動けなくなり俺は膝立ちのまま乳首を弄り続ける事になった。

イきそうになるとやわやわと撫でるような弱い触り方しかしなくる。
それで少し落ち着いた頃になって痛いくらいに指で挟む。
痛い、と思った次の瞬間にはピリピリと痺れるような感覚に変わって、その状態の乳首を押したり捏ねたりするとヨダレが出るくらい気持ちいい。
もう隣の部屋に兄貴がいる事なんて飛んで、イきたいとしか思えなくなる。
でも焦らせば焦らすほど快感は増幅していって、イきそうでイけないこの快感にハマってしまいそうだ。

俺の意識が快感に支配されそうになったその時、突然ドアが開いた。
「おい、隣まで声聞こえてるぞ」
そこに立っていたのは兄貴で、おかしな事を言ってきた。
そんなはずはない。ちゃんと我慢してたし。
てゆーか……

てゆーか、やばい、早くやめないと。
今ならまだ膝立ちで着替えてたんだという言い訳が通用する。
乳首でオナニーなんてしてないと言い張れる…はず。

でも俺の手は止まってくれなくて、さっきまでの焦らしはどうしたんだというくらいに激しく乳首を刺激しだす。
そんなに強く引っ張ったら、あ…駄目だって!
兄貴が見てるのに。
兄貴の前で乳首でオナニーしてイくなんて。
そう思った瞬間、ゾクンゾクンッ、とえもいわれぬ感覚が背筋を走り抜けた。

「アアアッ!見るな!見るなぁっ!!あっ、くぅんっ、や、あ、ああーーっ………!」

閃光が走って俺は兄貴の目の前で盛大にイった。
ビクン、ビクン、と痙攣が止まらず、それに合わせてちんこからドロドロの精液が出る。
ズボンを履いたままだったから中がひどい事になっている。
「あっ、あ、あ……っ……」
乳首でイく時は射精が長く続く。
それを兄貴はずっと見ている。
あまりの恥ずかしさに発狂しそうになるのに俺の手は乳首を刺激するのをやめない。

恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいっ!
でも全然射精は止まらないし、体に力がはいらない。
それなのに乳首だけはしっかり刺激しているし、しっかり膝立ちでちょっともっこりしてビクビク動いている股間を隠すことも出来ない。
もうパンツの中がビチャビチャで気持ち悪い。

「え、何、お前イってんの?乳首だけで?まじで?」
「っるっせ……ん…あ、あ…!」
言われてまたピュクッと精液が出る。
もう俺の人生終わった。

「お前乳首感じるんだな」
「んっ…別にっ、感じてなんかっ……」
「うわー、ちょっと男の乳首とは思えないぞソレ」
「あっ、あっ、んん…見て…ん、じゃねえよっ…」
「そんなに抓って痛くねえの?……痛くないみたいだな」
「んんーーっ、やっ、あっんっ……!」
俺の様子なんておかまいなしにいろいろ話しかけてくる兄貴に殺意が芽生えた。
楽しそうで腹が立つ。

ようやく長い射精が終わった。
終わったのに俺の手は乳首を弄り続ける。
くそ、またちんこ勃ってきた。

「このまま第2ラウンドとかお前若いな」
兄貴まだいたのかよ!
頼むから早く出ていってくれよ。
と思ってたら出ていくどころか近づいてきた。
え、なんで?
動揺している俺の股間に兄貴の手が伸びる。
ま、まさか兄貴にそんな趣味が……?
「ちょ、な、なにを……」
「んー、今からじゃ手遅れかもしれないけど……」
そう言って兄貴は俺の制服のズボンとパンツを膝まで降ろした。
な、なんて事を!

「そのままだと制服が駄目になるだろ。うわ、お前出しすぎじゃね?」
とんでもないありがた迷惑だ!
「ひゃ、やだっ、見るなぁっ…!」

「しかし本当に乳首だけでイってたんだな」
うるさいだまれ!
「あっあっんんんっ……」

「お前こんなんばっかりしてるから部屋に匂いが篭るんだぞ。窓開けといてやるよ」
大きなお世話だ!
「そんな、あ!やぁ…!」

「じゃあ邪魔して悪かったな。俺は下にいるから気にせず励めよ!」
最後にそう言って兄貴は一度隣の部屋に戻ると階段を降りていった。

途端にガクン、と体が脱力して床に倒れる。
だけど乳首の疼きも俺の手も止まらない。
そこへ開け放された窓から近所の子供が遊んでいる声や、少し大きな世間話の声が聞こえてきてビクッとなる。
外の声が聞こえてくるという事は俺が少し大きな声をだせば外に聞こえてしまうという事だ。
それだけは避けなければ、と思うのに俺のちんこはどんどん硬度を増して、乳首をキュッと捻ると変な声が抑えられない。

手が勝手に動いているのか、それとも自分が動かしているのか、もうよく分からない。
濡れた股間に風があたってひんやりとする。
結局俺は足にズボンとパンツを絡めた間抜けな姿のまま床に寝転びイくまで乳首を弄り続けたのだった。





そんなつい先日の出来事を思い出す度に身悶えしてしまう。
ちなみに今日は土曜で学校はない。

俺は一体どうなってしまったんだろうか。
兄貴が見ている前で俺は、俺は……。
兄貴だって気を利かせて出ていけばいいのにずっと見てるし。
でも兄貴が入ってきた時すぐにやめればよかったはず。
いやあれは手が勝手に動いて止められなかったんだ。
だから兄貴に見られながら乳首を弄ったとしても、兄貴が出ていってからも乳首を弄り続けたとしても俺のせいじゃない、俺のせいじゃないんだ。
でも自分の手なのになんで止められなかったんだろう…。
やっぱり俺は乳首を触りたいだけの変態なのか?
いやでも……

そうやって自室のベッドの上でぐるぐるジタバタしていると、来客を告げるチャイムが鳴った。

ババアは出掛けたきり帰ってきてないし親父は今日も仕事。
つまり今は俺しかいなくて俺が出るしかない。

…めんどくさい。
居留守使うか、と無視を決め込もうと思っていた矢先、
「こんにちはー!シロネコ運輸でーす!」
という元気の良い声が聞こえてきた。
チッ、宅配便かよ。
受け取らなかったら後でババアに小言を言われるに違いない。

ため息混じりに重い腰をあげるともう一度チャイムが鳴った。
今行くから待ってろよ!
インターホン?
リビングにあるからわざわざ行くのめんどくさい。

急ぐことなく玄関を開けると配達員は不在票を準備していた。
気の短いヤツだ。
俺を認めるとそいつは手に持った小包を差し出してきた。
「あ、どうも!お届け物です!」
「どーも」

届いた荷物は俺宛てだった。
差出人は知らない会社名。
全く覚えがないが住所も名前も合っているので配達ミスではなさそうだ。
一体なんだろうと品名を見るとそこにはこう書かれていた。

『男性用ニップレス』

…………………………………。
こ、これはどういう事だろうか。
俺が固まっていると配達員が受領印を求めてきた。
ハンコ、はどこにあるか知らないし、サインでいっか。

大丈夫、これはこの家に届いた荷物で俺宛てに届いたなんてこの配達員には分かるまい。
平静を装ってここにサインして荷物を受け取ってしまえば何も問題ない。
俺の乳首は普通、俺の乳首は普通……よってニップレスなんて使わない。
そう心の中で唱えながら伝票にサインする。
……配達員が俺の胸を凝視しているような気がするのは何かの間違いに違いない。

しかし俺の心の叫びなどおかまいなしな配達員が
「あ、サインはフルネームでお願いします!」
なんて事を言うからこの荷物が俺宛てだという事がバレてしまった。
いやまだ誰かに頼まれて俺が代理で注文した、という説も捨てられない。
そう、使うのは俺じゃない、だから堂々と受け取れば何も恥ずかしくない。
はずなのに、絶対赤くなっていると自分でも分かるくらい顔も体も熱くなっていく。

こ、これじゃ俺がニップレスを必要としている張本人みたいじゃないか。
しかも間の悪いことに乳首が少し、ほんの少しだがTシャツを押し上げている。
体が熱くなっておかしくなったのか、あろう事か俺の乳首は完全に凝ってTシャツの生地の摩擦で感じてしまい、変な声がでそうになった。
やばい、ちんこ勃ちそう……。

玄関先で見知らぬ配達員に見られながら乳首で感じて勃起しそう。
自分の状況を客観的に捉えると俺はただの変態だった。

ていうかもうサインしたんだけどいつまでいるんだこの配達員。
「…あ、あの、っ荷物……」
「……へっ!?あ、す、すみません。…はい、サインオッケーです!どうも、ありがとうございましたー!!」
配達員は伝票を受け取ると荷物を俺に渡して(偶然だがこの時ダンボールの角が乳首に当たって腰抜けるかと思った)帰る時も元気よく挨拶して綺麗に90度にお辞儀した後出ていった。
ドアを閉める前にチラっと俺をみたその顔が赤かったのは気のせいだと思いたい。





部屋に戻りダンボールを開封すると出てきたのは品名の通り男性用ニップレス。
パッケージには乳首にこの商品をつけて胸を張っている男性。
裏面にはニップレスの付け方が写真付きで載っていた。

その中の一文にはこうあった。
『……2、3秒乳首を抑えてその上から当商品を貼りつけます』

こ、こんなもんつけられるか!
てゆーかこの荷物、絶対兄貴の仕業に違いない。
ちくしょう覚えてろ!

そこで俺はようやく兄貴の名前でサインすればよかった、と思い至ったのだった。


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© 2013.08 紺野
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