今年一年を振り返る






「今年も残すところあと僅かね……じゃあみんな、今年一年を漢字一文字で振り返ってみましょうか」
「じゃあなの、いっきまーす! なのはズバリ『愛』です!」
「……だな」
「だね」
「異論なし。次行きましょうか」
「センパイたち! もっとなのを弄ってくださ〜い!」
「だって弄りようがないもん」
「だな」
「次、志乃ちゃん」
「アタシ? アタシはえーと……『変』かな?」
「色々変わったわよね、志乃ちゃん」
「でも良い変化だからな、良い事だよ」
「えー……あたしは志乃センパイが、『変』人な椎名先生に捕まったことかと思いました」
「……なの。言葉はオブラートに包みなさい。例えそれが事実だとしても」
「紫ちゃん……駄目押ししないで。例えそれが事実だとしても」
「志乃ちゃんまで駄目押ししてるわね……じゃあ次、わたし。わたしは『叶』ね」
「「「あー……」」」
「積年の夢が叶ったんだもんなあ……」
「これ以上相応しい字はないね……」
「かんなセンパイ、羨ましいです〜」
「最後は私か。……って言っても、特に思いつかないんだが……」
「えー。紫ちゃんにはあの字しかないでしよう」
「そうね」
「ですよねー」
「え? え? 一体何?」
「「「『恋』」」」
「異議あり!」
「異議は認めません。わたしたちの中で一番に彼氏持ちになったクセに」
「しかも出逢ってから落とされるまでが一番短かったクセに」
「あたしは認めません! 紫センパイが……あたしの紫センパイが北条くんなんかに落とされるなんて……っ」
「あれ? そう考えたら紫ちゃん、『落』でも良いんじゃない?」
「確かに……」
「かも……」
「不吉すぎるから却下!」
「じゃあやっぱ『恋』ね。はい決定〜」
「来年はどんな年になるか、楽しみね」






「ハイ。と言うわけで、男子もこの企画に参加するように通達がありました。進行は僕、北条が務めさせて頂きますね。回答者はこちらの皆さんですー」
「「「……なんで俺が……」」」
「サクサク発表したら帰っていいそうなんで、サクサク発表してくださいねー。ちなみに僕は『獲』です!」
「……言い得て妙だな……」
「見事に鷹月先輩を落としましたからね……」
「でも会長センパイも似たような言葉じゃありません?」
「そうだな……俺はさしずめ『得』かな」
「……何を?」
「会長センパイは相澤センパイをゲットしたんですよ、椎名先生。でも先生も佐伯先輩をゲットしたでしょう?」
「……ゲット?」
「えーと……両想いになった、ってことです」
「そうだね……じゃあ俺は『満』かな」
「満たされて良かったですね、椎名先生」
「うん」
「……で? さっきから黙りこくってる下野の漢字は何なの?」
「俺は『弓』だ。他に無いだろう」
「却下」
「なんで!?」
「面白くないから」
「どうして面白さを求める!?」
「下野は『逃』で良いだろう」
「宮本先輩まで……なんでそんな後ろ向きな言葉なんですか!?」
「……だって逃げなきゃ捕まっちゃうよ?」
「誰に!?」
「心当たり、あるでしょ?」
「〜〜〜〜!!」
「あ、逃げた」
「『逃』で決定だね……」
「ですね。じゃあこれで出揃いました、ということで。相澤先輩に報告してきまーす!」
「それでは皆様、良いお年をお迎えください」
「……また来年、お会いしましょう……」



 まさかの椎名の締めで──了。


 
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