本当は○○なCoideko童話 -シンデレラ変- B









弓道着を着て、その場をドナドナ〜と魔女に見送られたシンデレラの更に後方に腕組みをして立っている人がいたのには誰も気が付きませんでした。

「……あの椎名魔女……。魔法は実験の為にあるのではない。次の魔女認定協会の場で会長に伝えなくては。」

眉をしかめたもう一人の魔女はボワンと一瞬でその場から姿を消しました。





そしてドナドナをされたシンデレラはと言うと──。

「……ちょっ、もう少しゆっくり走れよ!落ちるっ……。」
「ヒッヒーン!」

運悪く、言うことの聞いてくれない馬に引かれた馬車はもの凄いスピードを出しながら馬の走るままに城へと向かっておりました。
馬は好き勝手に走れるのでご機嫌です。しかしシンデレラは馬車の中で不機嫌でした。

(……あの魔女のヤロ〜。)

はちゃめちゃな椎名魔女に腹を立てていたシンデレラでしたが、城に着いた途端、いきなり馬が勝手に走る足を止めてしまったため、馬車の床に思いきり顔を打ち付けたのでした。

ガンッ!

良い音が門扉前に響きます。
それに気が付いた門の番人が今日の舞踏会に来た方だと馬車まで迎えに出るとそこにはなんと!

「……な、なんて格好をしているんだ。それでは今日の舞踏会に参加させることは出来ない。ちゃんと盛装してから来なさい。」

弓道着と弓矢を身に付けたシンデレラ(顔に擦り傷あり)をあしらうように顔をしかめました。
シンデレラには事態が飲み込めません。
だってこれで大丈夫だと魔女に言われたのですから!

「何で、武闘会だろ?これが正装だろ?」
「そうだ。舞踏会だから盛装が必要なんだ。そんな格好では城には入れられん。帰った、帰った。」
「はあ?何でなんだよー!」

シンデレラの雄叫びが舞踏会真っ最中のホールに届くことのない頃、この国の王子であるプリンスなのにわらわらと猛者い、もとい華麗な姫君たちが蟻のように集っているのでした。

「もう、なのの運命の人はどこなの!?」

姫君たちに集られているプリンスなのは熱気と汗臭さを懸命に潜り抜けて、マントを叩いた瞬間でした。
バルコニーの方にドレスの後ろからでも直ぐに判る筋肉美。切れ長な目の整った横顔。そんな姫君が一人、何かを呟きながら外を眺めながら佇んでいました。

ズキューン!!

プリンスなののハートが射ぬかれました。

「……筋肉、……筋肉。」

プリンスなのが一人佇む姫君にじわりじわりと近付いていきます。

「……あの、貴方の名前教えて下さい!」
「……え、俺?みやびや姫ですけど……。」
「……みやびや姫……筋肉……腕、胸……完璧……。」





お城の中でそんなやりとりがあることも知らずにシンデレラは馬車から降りて地面に座り込んで溜め息を吐きました。

「武闘会って聞いてなんで摘まみ出されなきゃならねんだよ。強い相手と闘えると思ってたのによ。くそ、あの魔女めっ!」
「……同感だ。」
「うわあぁあっ!」

ボワワン。
シンデレラの真後ろにいきなり洋書を片手に、肩には白梟を乗せたはたまた大きなマントを纏った人影が現れました。
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