雨のちRainbow A








「これでなのの成績アップは間違いないだろう」
「またそんなくだらない考えをなさって」
「煩い!」
「社長は人の名前を覚える気がなさすぎます。大体、昔から貴方は…」


俺は響の小言を無視して店の外に出た
相変わらずどしゃ降りの雨に通行人は居なかった
すると駅側から1人の女性が傘を持たずにこちらに走って来た



「すみません、少し雨宿りさせてもらえますか?」
「どうぞ」
「ありがとうございます」


深々とお辞儀をした彼女はどう見ても全身びしょ濡れで…

「俺、タオル取って来ますよ」
「あっ、いえ。なのちゃんのお兄さんにご迷惑をかける訳には行きません」
「…なのちゃんのお兄さん?」
「? ええ、一番上の蒼お兄さんですよね?」


………誰だ?この子

2人で首をかしげていると、店のドアが開き響が俺達を店内に促した


「タオルお使い下さい。相澤さん」
「橘さん、ありがとうございます」
「洋服がびしょ濡れですね。どこかに出掛ける途中でしたか?」
「ええ…待ち合わせをしていたんですが、突然雨が降り出してしまって…」
「そうでしたか」
「あっ、電話…。ちょっと失礼します」


びしょ濡れの相澤さんとか言う彼女は店の隅で話し始めた


「もしかしてまた誰か分かってないんですか?」
「悪いか」
「なのちゃんの文芸部の部長さんですよ」
「ああ!椎名先生と同じくこの間食べに来てたな。丁寧な挨拶でしっかりしていた彼女だな」
「社長、本当に頼みますから人の名前と顔をしっかり覚えてください」
「ふんっ」


再び響の小言から逃げようとしたら、店のドアが開いた

「いらっしゃ…」
「かんなっ!びしょ濡れじゃないか。それに待ち合わせ場所に居ないから心配したぞ」
「ごめんなさい…」
「いや、いいんだ。かんなが無事でいたんだからな。寒くはないか?」
「うん、大丈夫。こう兄ありがとう」


いきなり店内に入って来た男性と相澤さんは2人の世界に入ってしまった

おい、さっきの俺の笑顔と挨拶を返せ!


「社長、この方はなのちゃんの高校の生徒会長の宮本さんですよ」
「やっぱりこの間皆と店に来たよな?」
「ええ」
「今日はなのの知り合いが多く来店するな」
「1度会ってるご縁でしょう」
「どうせなら、愛しのなのが来ないかな〜」


響と話していると、こちらの世界に戻って来た宮本くんが話掛けて来た


「なのさんのならさっき駅の方でしも「こう兄!」
「いえ何でもありません」
「なんだ?何かを言い掛けてたじゃないか」
「かんなが大変お世話になりましたとお礼を伝えたかっただけです」
「何か隠しているな?」
「いえ、何も」
「こう兄、なのちゃんのお兄さんのチェリーパイ、買って行かない?」
「そうだな。そうしよう」
「では私がお包みしましょう」



こいつら絶対何かを隠しているな
聞き出してやる


「君達代金はいいから隠してる事を話しなさい」
「社長!何を偉そうに言ってるんですか。この人の話す事は気になさらないで下さいね」
「響、邪魔をするな!なのがしもナンチャラと何だって?」
「相澤さん、こちらがチェリーパイです。これは私の気持ちですのでどうぞお受け取り下さい」
「え…、頂く訳にはいきません」
「いえ、なのちゃんのお友達からお代は頂けません」
「おい!俺を無視するな!」
「かんな、橘さんのご厚意を受け取ろう」
「うん。ありがとうございます、橘さん」
「いいえ、お気になさらずに」
「だーかーらー、俺を無視するなー!!」


挙げ句の果てに、響は2人を促して帰してしまった


「おい!ふざけるな響」
「あっ、雨が上がったみたいですね」
「あの宮本とか言う奴がなのはしも…と言ったんだぞ?しもとは下野の事じゃないだろーな!?」
「社長、お見事正解です。外を見て下さい」
「ああ?」


外を見ると反対側の通りからなのがこちらに向かって手を振っていた

「なの〜」


愛しのなのを抱きしめる為に俺は急いで外に出た

がっ!よく見ると下野とあと2人の男女と一緒にいるではないか

オーマイガッ!!!!


「蒼お兄ちゃ〜ん♪お仕事頑張ってねー」


無邪気に手を振る愛しのなのを涙目で見送った


「一緒に居たのは聖さんと文芸部の鷹月さんと北条さんでしたね」
「…まあ2人きりでは無かったからデートではないな」
「ダブルデートなのかもしれませんけどね」
「響、黙れ」



Rainbow



溢れる涙をこらえて空を見上げると、虹が掛かっていた


「虹か…」




それを見てケーキのアイデアが浮かんだ俺は早速試作品を作る為、キッチンへと足早で向かった
そしてそれは確実に塩味になるだろうと思いながら



fin



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