![]() | とある雷雨の日の景色 |
止みそうな気配は全くない雨の外は、夜を思わせるほどに真っ暗な雲に覆われていた。遠くでゴロゴロと言う音が聞こえていて、その都度パソコンを叩くなのの手が止まる。そして、 暗い外が、一瞬、真っ白に染まった── ゴロゴロゴロゴロ…… 「キャー!!!!」 「大丈夫よなのちゃん。ただの雷だから」 「また光った〜! ゆっ、紫センパイ怖いです〜!」 「よしよし。なのっち、大丈夫だからな」 「……吉野、どさくさに紛れて僕の紫サンに抱きつかないでくれない?」 「だってだって……」 カッ! バリバリバリッ 「ギャー! 今の……今の近かった〜!」 「……吉野、煩い」 「うん……さすがにビックリしたね」 「ちょっとドキドキ言ってるわ……」 「そうか?」 「紫サンは平気なんですか?」 「さすがの私も驚いたぞ」 「…………いっそ吉野と紫サンの驚きっぷりを、足して3で割れたらちょうどいいのに……」 「……悪かったな、可愛げがなくて」 「あ、紫サンはいいんですよそのままで。僕の願望を押しつける気はありませんから」 「ねえ北条君、なんで『2』じゃなくて『3』で割るの?」 「なんていうか、2で割っても濃すぎる気がして」 「ああー……」 「こら志乃ちゃん! 納得しない!」 ピカッ! ドーン!! 「ギャー!」 「ぐぇ……締まる……」 「……紫サンを落とさないでよ吉野。わかった、堪えられないならとりあえず僕のところに来ようか」 「ふぇ……いっつも雷鳴ったらお兄ちゃんたちにぎゅーってしてもらってるんだけど……北条くんがなんとかしてくれるの?」 「うん。ぎゅーっとしてあげるよ……抱き潰れて静かになるまで」 「……それって……ぺっしゃんこじゃんあたし!」 「そのつもりだけど」 「北条くん酷い! 優しくない!」 「……北条、なの! いい加減にしろ!」 「はいはい。紫ちゃんの言うとおりよ。でも……これじゃ部活にならないわねえ……」 「暫く続きそうだよね、雷。部活切り上げるったって、帰れないから意味ないし」 「そうねえ……じゃあゲームでもしましょうか」 「ゲーム? 何の?」 「連想ゲームとかどうかしら。お題は『雨』で、雨から連想するものを順番に言っていくの」 「……面白そう!」 「ようやくなのっちの顔に生気が戻ったな……」 「じゃあなのちゃんからね、はい」 「え? えーと……虹! 次志乃センパイ!」 「んー……傘。次、紫ちゃん」 「……水たまり、かな。かんなちゃん」 「照る照る坊主。最後は北条君ね」 「えっと、カタツムリ……とかセーフですか?」 「セーフじゃない?」 「良かった。じゃあそれで」 「はい、最初に戻ってなのちゃん。次はもうちょっと捻った答えで行きましょうか」 「ひね……捻った? えーと、うんと、……川の増水」 「……もうちょっと詩的な言葉でお願いね、志乃ちゃん」 「じゃあ……『五月雨を集めて早し最上川』」 「ここで芭蕉が来るとは……流石だな、志乃ちゃん。私は『乱層雲』でどうかな」 「らんそううん……ってなんですか紫センパイ?」 「単純に言えば『雨雲』のことだよ」 「詩的、って言うより気象学的分類だね」「『入道雲』とは違うんですか?」 「入道雲は積乱雲。類が違うんだ」 「次はわたしね。『狐の嫁入り』」 「…………ワカリマセン」 「お天気雨のことよ。はい、次北条君」 「……吉野の悲鳴」 「北条……それ連想か?」 「雨→雷→吉野の悲鳴、ですかね。連想って言うより洗脳です」 「北条くん酷い!」 ピカッゴロゴロ…… 「っきゃー!」 「ほらね」 「……否定できんな」 「一理あるわね」 「今度から雷が鳴ったら、下野君を召喚しましょうか……」 「「「異議なし」」」 「キャーいやー雷怖いー!!!!!!」 とある雷雨の日の景色 |