運も実力のうち








「な、なんでお前がここにいるんだぁーーー!!!」




普段クールである彼、下野聖から発する声量ではない叫び声が放課後の弓道場に木霊した



も実力のうち




「おー、なんだ下野。吉野とは知り合いか?」
「ぶ、ぶ、部長!なぜ彼女が弓道部のオリエンテーションいるんですか!?」
「知りたいか?それはだな、彼女が弓道部員だからだ!どうだ!」
「威張らないで下さい。なぜ彼女を入部させたのか聞いているんです。自分で言うのもなんですが、俺目当ての女子部員は入部させなかったと言ってたじゃないですか」
「おー、言ったぞ。だけど吉野はいいんだ」
「はい?」



俺は目の前の事実を飲み込めずに動揺していた

なぜこいつがいるんだ



「ひーくんったら照れちゃってぇ〜」
「お?2人はラブラブなのか?」
「違います!こいつとは赤の他人で!何の関係もなく!付き纏われて迷惑してるんです!」「照れるな、照れるな下野ー」
「そうだ、そうだー、ひーくん」
「だから部長、話を聞いて下さい。そして吉野、お前は黙れ」
「柿原くん、下野くんで遊ぶのはそれ位にして事情を説明してあげましょう」



副部長の沢城先輩がやんわりと部長を諫めた
って、俺で遊ぶって何だ?



「そうだな、彼女が入部した理由を知りたいなら話そうじゃないか」



そして柿原部長が吉野が入部した経緯を話し始めた−




「すみませーん。1年C組、吉野なの。入部希望ですっ!」


下野を目当てとする入部希望者を退散させて程なくして、部室のドアが盛大に開いた



「うはぁ、かわいこちゃんっすね、部長〜」
「元気があっていいな」
「本当に。えーと、吉野さん?だったかしら」
「はい、吉野なのです!」
「あなたは弓道経験者かしら?」
「いえ。未経験ですが下野くんと一緒に全国大会目指して頑張りたいんですっ!」
「下野?」
「あー、また下野目当ての入部希望じゃないっすか」
「なんだ期待外れだったな」
「そうねぇ…」


勢いよく現れた彼女に俺は何かの可能性を感じていたのだ



「あのね、吉野さん。うちの弓道部は本気で部活をやりたい人のみ入部させたいのよ。だから、下野くん目当てなら帰って頂けるかしら」
「嫌です!あたし、部活も下野くんも全力で頑張りますから!」
「ええ?」
「やる気はスゴいっすね」
「下野を頑張るってなんだ?」
「あたし、絶対小出高校弓道部を優勝に導いてみせますから!」



初心者だと言うのにこの彼女の自信はどこから来るのだろうか?



「面白いな、君は。弓道をした事もない君が優勝出来るとなぜ断言出来る?」
「下野くんとあたしが入部するからです」
「俺、意味不明っす…」
「でもまあ、やる気と自信は大事よね」
「あーはっはっはっ。気に入ったぞ。でもな?口だけで言うのは簡単だ。何か証拠を見せて欲しい」
「証拠…」



彼女は俯いてしまった。口先だけなのだろうか
でも俺の感は当たるのだ。彼女なら大丈夫だ、と



「じゃあ、一発勝負であの的のド真ん中に矢を射ったら入部させてくれますか?」
「初心者っすよ、絶対無理に決まってますって」
「確かに。ねえ、柿原くんどうするの?」
「いいじゃないか。彼女に射たせてみよう。面白いじゃないか」
「ありがとうございます」



俺は彼女に矢の射ち方を星良に軽く指導させた



「矢の射ち方は分かったかしら?」
「はい。大丈夫です」
「よし。じゃあ、1回勝負だぞ?射ってみろ」



彼女がたどたどしく弓を構えた



「初心者は矢を的に当てるのですら難しいじゃないっすか」
「でも何かやってくれそうな感じがするのよね、彼女」
「星良も感じたか?彼女は何かとてつもないモノを持っているはずだ」
「…ちょっと2人とも大丈夫っすか?」



そして彼女が的を目がけて矢を放つ
パーンッと乾いた音が弓道場に響き渡り、矢は的の中心部に刺さっていた



「やったぁぁぁ!!」
「うおー!!スゴいっす!」
「本当にスゴいわ…」
「よしっ!これ以上の証拠はないな。吉野なの。弓道部への入部を認めよう」
「はい、ありがとうございます。宜しくお願いします」




「と、いう訳だ。吉野は下野と共に我が弓道部の救世主だ!期待してるぞ」「は?」
「きっと今年は2人の力でインターハイ出場…、いえインターハイ優勝も間違いないわ」
「え?」
「気合い入るっすね」



俺以外の部員が吉野を囲み盛り上がっている
俺は疑問に思った事を口に出してみた



「あの…、それって紛れじゃないんですか?」
「なんだ、例え紛れだったとしても問題はない。運も実力のうちって言うだろ?」



なんだその理由…
そして柿原部長が俺に最大級の爆弾を落とした



「そうだ下野。吉野の教育係はお前だ。2人で切磋琢磨して我が部を優勝に導いてくれよな!」
「って、事で宜しくね、ひーくん♪」
「嫌だーーー!!!!!」




俺の悪夢の日々が再び訪れた

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