才色兼備







他愛ない話をしながらお昼ゴハンをつぐみちゃんと食べるのが日課
最近の会話の内容はもっぱらひーくんだけど
そして話は文芸部に移った



「どう?憧れの文芸部に入れて」
「もうね、なの幸せ〜」
「本当に幸せそうだね。良かったわ」
「センパイ達の事、聞いてくれる?つぐみちゃん」
「なになに?」









「部長のかんなセンパイはね正に大和撫子!紫センパイは男子よりも男前で超カッコいいの!で、志乃センパイは大きなお目めが可愛い天然小悪魔なんだよー。もう憧れずにいられないよ♪」
「私も噂で聞いたよ。文芸部の3人はモテモテだって」
「3人みたく素敵な女性になりたいなー」


あたしはセンパイ達を思い浮かべウットリした



「渡瀬ー、お客さーん」
「え?誰?」
「とりあえず来いよー」


廊下側にいた男子がつぐみちゃんを呼んでいる



「なの、ちょっと行って来るわね。もう、何だろう…」
「はーい」



きっとつぐみちゃん目当ての男子だろうなー
つぐみちゃんは昔からモテモテだもん
そういえば…好きな人聞いた事ないな…
何となく思い当たる節はあるんだけど…、つぐみちゃんの口から出るまで待ってよ

さあ、あたしは大好きなひーくんを見に行って来よーっと♪






そして、放課後
文芸部に勤しんで向かうあたし

部室のドアを開けると部屋にはあたしが大好きな甘い匂いに包まれていた


「この甘ーくウットリする匂いはなんですかぁー」
「開口一番がこれだなんて、なのちゃんは食いしん坊さんね」
「そうだぞ、なのっち。挨拶はちゃんとするんだ」
「はーい、すみません。こんにちは、センパイ」
「こんにちは、なのちゃん」
「こんにちは、なのっち」



大好きなかんなセンパイと紫センパイを見て思わずニヤケてしまう
でも志乃センパイが居ない事に気づき質問を投げ掛けた「あれー?志乃センパイはどこですか?」
「あった、あったー。今日の食器はこれでいいかな?」
「あー、志乃センパイみっけ♪」


志乃センパイの登場に嬉しくなり、抱きつこうとしたら……

ビタンー

床に思いっきり倒れた



「…痛い…です…」
「悪いな、なのっち。思わず足が出た」


あたしは紫センパイの足に躓き転んだらしい



「ありがとう、紫ちゃん。アタシ食器持ってたから危なかったよ」
「なのちゃん、いつまで床に寝そべってるのかしら?起き上がれる?」


かんなセンパイが手を差し伸べてくれたので、起き上がりその手にしがみ付こうとしたら…

あったはずの手が無く、今度はそのまま前に倒れた


ベタンー



「…またまた…痛い…です…」
「すまんな、なのっち。お湯が沸いてたからかんなちゃんを呼んだんだ」
「………左様ですか」



あたしは額を擦りながら起き上がった

ちょっと涙目になりながらテーブルを見ると、甘い匂いを発していたシフォンケーキと綺麗な色の紅茶が置かれていた
しかもアンティーク食器でオシャレ飾られている


訳が分からずポカンとしていると



「「「ようこそ文芸部へ」」」




3人同時に歓迎の言葉を言われて、あたしは一瞬頭の中が真っ白になった



「茶葉を選んだのはかんなちゃん」
「シフォンケーキを作ってくれたのが、紫ちゃんよ」
「で、食器を選んでセッティングしてくれたのは志乃ちゃんだ」



入部して間もないあたしの為に歓迎会をしてくれたセンパイ達
なんて優しくて素敵で女子力が高いんだろうか



「おい、なのっち?」
「どした?なのちゃん」
「なのちゃん?」



紫センパイに脇を擽られてても、志乃センパイに頬っぺたペシペシ叩かれてても、かんなセンパイに原稿は締切厳守!って書かれた紙を見せられてても全然気にならない



だってあたし今、超幸せだものっっ



才色兼備なセンパイ達に少しでも近づけるよう、吉野なの頑張ります!!




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