誰か夢だと言ってくれ







それは前触れもなくある日突然訪れた



「ねえ、お兄ちゃん達って恋した事ある?」



ーガンッ
ードンッ
ーバーンッ
ーバリバリ


確実にリビングが壊れる音がした



「な、な、な、な、な、な、なの…なんて言ったのかな?蒼お兄ちゃん聞こえなかったなー」
「奏も耳が遠くなったみた〜い。なの姫もう1回言ってみて?」
「だからー、恋ってした事ある?」
「ぐはっ」


蒼兄さんが心臓を押さえながら倒れた



「心臓が痛い、救急車!」
「蒼ちゃーん!しっかり〜!」
「ええー。蒼お兄ちゃん大丈夫?」
「なのー、お兄ちゃんもうダメかも…。だから最後に抱きしめて」
「蒼ちゃん、それはダメだよ〜。奏が抱きしめてあげるよ」
「しっ、しっ。なのじゃなきゃ嫌だ」
「蒼お兄ちゃん元気じゃん」
「元気じゃないよ〜。なの〜ハグして〜」
「あっ、奏も〜」



まったくこの兄2人は…



「蒼兄さんも奏兄さんもなのの質問に答えたらどうですか?」
「そうだった。ねえ、恋した事ある?」
「……」「……」
「なんで蒼お兄ちゃんも奏お兄ちゃんも黙ったままなの?」



2人が黙る気持ちは分からないでもない
何故なのがいきなりこんな質問をしてきたのか…

きっと、そう…
なのが恋をしたからだ…


いつかは、、、との覚悟はしていたもののやはり受け入れたくない現実だ



「もー、黙りじゃ分からないじゃん。あっ、じゃあ悠お兄ちゃんはある?」
「え?僕?」
「悠。賢いお前がなのに説明してあげなさい」
「そうだね〜。悠が適任だよね〜」
「なぜ僕が。恋に関してなら奏兄さんが適任じゃないですか?」
「え〜、俺〜?」
「もう誰も答えてくれないなら、翠お姉ちゃんに聞くからいいもん」


なのが立ち上がりケータイを手に部屋を出て行こうとしてる



「このドキドキ、ギューが恋だって教えてくれたのも翠お姉ちゃんだし」



……やはり恋したのか



「待ちなさい、なの」
「なあに?蒼お兄ちゃん」
「翠がなんだって?」
「えー、だから、ドキドキ、ギューって恋なのよって教えてくれたの。なのね、恋しちゃったのー!きゃー、言っちゃった♪」



「ぎゃああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ちょっと奏兄さん、発狂しないで下さい」
「悠!翠を呼べ!今すぐ、ここに翠を呼べーい!」
「は?蒼兄さん、粉ふるい取り出して何言ってるんですか!?」


床で発狂しながら転がり回ってる奏兄さんと
粉ふるいを振り回しながら意味不明な言葉を叫んでる蒼兄さん

落ち着かせる為に僕は仕方なく、力(鳩尾に一発)で制圧した

そして30分後、騒ぎを聞きつけた翠姉さんが来た


「もー、なんなの?急に呼びだしてー」
「翠お姉ちゃーん」
「やーん♪なのちゃーん♪今日も可愛いんだからー」


なのを抱きしめて、あらゆる箇所を触りまくっている
相変わらずスキンシップが激しい人だ



「えーい、翠!そこに座れっ」
「翠ちゃん、ちなみに正座でね〜」
「……なんで貴方たち手足縛られてるの?」
「僕が縛りました」
「悠お兄ちゃん、スゴイんだよ!いとも簡単に縛り上げたんだからー」
「あら悠ったら。そんな趣味があったなんて、お姉ちゃん知らなかったわ♪」
「違います!2人が奇行に走るから縛りました」
「で、何があったのかしら?聞かせて頂戴」



翠姉さんがなのを連れてソファーに座った
…正座はやっぱりしないんですね



「翠!おまえは余計な事をなのに教えるな」
「余計な事ってなによ」
「……こ、…こ…」
「こ?」
「こ…の先が言えない…。認めたくない」
「分かるよ、蒼ちゃん」
「だからなんなの?」
「なのに恋を教えた事です」
「言うなぁぁぁああああ!悠ぅぅぅぅぅ!」
「いやあぁぁぁぁぁぁ!!」


断末魔の叫びのようだ…



「本当に煩いわね〜。恋くらいなのちゃんだってするわよ!それよりなのちゃんの初恋をみんなで応援しなくちゃ♪」
「なの頑張るー」




誰かだと言ってくれ



(俺は暫く旅に出る…)
(付き合うよ、蒼ちゃん…)
(そのまま帰って来なくていいですから)
(そうそう、そしてなのちゃん離れしてちょうだい)
(なの、お腹空いたー)



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