当たって砕けろ!






小出高校に入学して数日が過ぎた


相変わらずA組の下野聖くんに夢中の毎日
廊下からダーリンを見つめるのが日課になっている


はあんダーリン、今日もカッコいい〜



「また来てるね、あの子」
「暇な奴だ」
「下野、あんなに熱烈に想われて幸せじゃん」
「全くいい迷惑だ」



キャ〜!
ダーリンがこっち見た
凛々しい目がまた堪らな〜い
あたしが下野くんの格好よさに悶えていると後ろから声がした



「君って物好きだねー。毎日毎日下野に対する好きアピール度がハンパないよなあ」
「え?」


後ろを振り向くと、メチャクチャ背が高い男子がいた


「えっと…、だあれ?」


あたしが首を傾げるとその男子が話しだした


「僕は北条大海。下野の友達」
「え!?下野くんと深い仲の人?」
「ぶっ。深い仲…って。まあ昔から知ってるから間違いではないけど」
「いいなぁ。下野くんと仲良しさんで〜」
「君も頑張って仲良くなりなよ」
「うん!あたし頑張る!」
「あっ、君はなんて名前なの?」
「あたしは吉野なの!下野くんにメッチャ宜しく伝えてね〜♪」



北条くんは笑いながら教室に入っていった
そして、北条くんがダーリンに話しかけているのを見届けて、あたしは自分のクラスに戻った




「北条。あの変な女と何を話していた」
「気になるの?」
「まさか。迷惑行為を止めるように言ってくれたか?」
「迷惑行為?ただ見てるだけじゃん。それに下野の睨みに全く怯まない彼女はある意味スゴいよ」
「話にならん。次、来たら2度と来ないように言わねばならん」
「女と話さない下野が珍しいね。あっ、彼女、吉野なのって言うらしいよ〜」
「余計な情報はいらん」
「はいはい」




きゃっはー♪
今日もカッコ良かったぁ、ダーリン

もう下野くんが大好き過ぎるから想いの全てを伝えなくちゃ
だから告白しよう
うん!そうしよう!



「お帰り、なの。今日も見れた?」
「つぐみちゃん、あたし後で伝えてくるね」
「なの、ちょっと待って。誰に?何を?」
「下野くんに、好きですって」
「え゛!?」
「もうこの間みたいに止めても無駄だからね。伝えなくちゃいけないの。下野くんに、好きって伝えなくちゃいけないんだから〜!」
「なんなの、その使命感は…」
「つぐみちゃん、当たって砕けろ!でしょ♪」
「…そう…、砕けないように頑張って…」




そして、放課後になり下野くんに告白する為にA組にダッシュした

丁度、教室から出てきた下野くんに話し掛けた



「し、し、下野くん!話があるのでお時間下さい」
「………いいだろう。俺もお前に言いたい事がある」



え?下野くんもあたしに言いたい事があるって!?
やだぁ。何だろう

あたし達は人気の無い、踊り場へ移動した




「で、なんだ?話って」
「えーとぉ…」


ダーリンがあたしを見つめてる
やだっ!!
ドキドキが止まらない
だって、告白って初めてなんだもん
ドキドキ…ドキドキ…

あたしの心臓頑張れっ




「あたし、入学式に下野くんに一目惚れしました。す…好きです!好きで好きで仕方がありません」
「その感情は迷惑だ。そして2度と俺に近づくな」



…………ん?
あたし、振られた?
これが噂の冷酷非道なバッサリ斬りなんだ


「やだぁカッコいいー」
「は?」
「バッサリ斬る下野くんカッコいいー!!ますます好きになりました」
「…お前、人の話を聞いてたか?」
「聞いてた、聞いてたー。あたし、振られたんだよね?」
「ああ。因みに2度と近づくなとも言った」
「あたし諦めないからねっ!こんな1回くらいでへこたれないからね!ダーリン♪」
「はあ!?ダーリンってなんだ!ダーリンって」
「また明日ねー♪バイバーイ」
「お前は人の話を聞けーっっっ!!!!」






当たってけろ!


(つぐみちゃーん、あたし下野くんにバッサリ斬られたよー!当たって砕けたー)
(本当に砕けてどうするの!?)
(明日も張り切ってダーリン追っかけるからねー)
(失恋したとは思えないわ…)






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