華やかで憂鬱な色彩



恋する女の子達が、うきうきソワソワする季節が また── やって来た。


赤やピンクの様々なハ―トに彩られ、街はクリスマスよりも華やかかもしれない。




私は、フォンダンショコラを焼きながら…溜め息をまた1つ 溢した。


幼なじみの特権か…、否。妹の特権か。

バレンタインデー当日に作りたてを届ける事が出来るからの セレクト。





他の女の子達とは差別化を図りたい気持ちと、断わっても断わってもチョコレートを貰いまくる こう兄を見たくなくて…

"チョコを作るから。"なんて言い訳を駆使して早々に学校を出た。







直接手渡されるチョコレートは こう兄が断るからか、下駄箱や机にチョコが山のように置かれる。

要らない。と 無責任に ほっておく訳にはいかず…十和子さんが こう兄を学校まで車で迎えに行くのがバレンタインデ―の恒例行事。

そして、こう兄が帰ってくる前にチョコを届けに行って…十和子さんに引き留められ晩御飯を頂いて帰るのが、 私の恒例行事。




見たくもないのに、見てしまう事になったチョコレートの山に。
処分に困る…と、ぼやくこう兄に。思わず


『もういっその事、生徒会室の前に段ボール箱を置いて 生徒会のオヤツにさせていただきます。って貼り紙をしといたら いいと思う。』



…それは、私の押さえきれなかった嫉妬心から ポロッと溢れてしまった言葉だった。



でも こう兄的には案外 悪くなかったみたいで"ふむ…"少しの間 考えこむと


「そのかんなの文言に "本命は受け取れません。義理のみ、有り難く頂戴します。"と足して
横に学年とクラス・氏名を書く物を用意しとくか。


生徒会のオヤツにするのに 貰いぱなしも気になるし…一応ホワイトデーに。
いや 1ヶ月も保留にするのは俺が気になるな…。

よし直ぐにノートでもお返しすれば良いかな?学生の本分は勉強だし。
ノ―トは購買部で購入すれば、購買部の売上もあがるし一石二鳥か…。」



そんな事を呟いていた一昨年のバレンタイデー


翌年。教師達に完璧な根回しをし、購買部のお返しのノ―トの包装が、こう兄のお返し専用の可愛らしいスペシャルバージョンが作られたのは流石だと思う。



お陰で、ちょっとだけバレンタインが好きなれたのは、私だけの秘密。
日常 かんな 志乃 なの 紫1 
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