こっそり教えてあげる








今日は月に一度、彼に会える日
しかも今日はバレンタインデー





「失礼します」
「つぐみちゃん、いらっしゃい」
「あれ?今日って稽古はないんですか?」
「小学生も中学生もインフルエンザが流行っててね。しかも主人までインフルエンザになってしまったのよ。だから暫らく道場はお休みよ」
「師範、大丈夫なんでしょうか?」
「丈夫な人だからすぐに良くなるわよ。つぐみちゃんも気をつけてね」
「はい。では失礼します」




道場がお休みって事は今月は彼に会えないのか…



「はぁ…」



道場の前で溜息をついていると、会いたかった彼に声を掛けられた


「こんにちは、つぐみちゃん」
「こんにちは」
「暫らく道場お休みするんだってね。さっき師範の奥さんからメールが来たよ。一応、様子を見に来たんだけどつぐみちゃんの様子からして本当みたいだね」
「ええ…」



「残念だな」と呟くこの彼の名は−

吉野悠


私の親友・なののお兄さんで…
そして、私の好きな人




「道場お休みなら仕方がないね、帰ろうかな。つぐみちゃんはどうする?家、近所だし一緒に帰ろうか」
「はい」


やったあ!超ラッキー
悠さんと一緒に居れる
私は秘かにガッツポーズしをした


「どうかした?つぐみちゃん」
「いや、いやいやいやいやいや、だだだ、大丈夫ですっ」
「ふふっ。つぐみちゃん、なのレベルで怪しいよ」
「え!?私はあんなに怪しくありません」
「僕の妹なんだけどね」
「あっ、いや、そんな悪い意味じゃなくって…。その…ごめんなさい」
「大丈夫だよ、分かってるから。僕もなのレベルで怪しいとか言われたら嫌だし」
「私の親友なんですけどね」
「そうでした」
「くすくすっ」



それから私は悠さんと他愛ない話をしながら家までの道のりを歩いた


チョコいつ渡そうかな…
いっその事告白しちゃおうかな…

いやいやでも…、この関係が崩れるのは嫌だし



「じゃあ、ここでさよならだね」
「え?あっ、ああ、着きましたね。着いちゃいましたか」
「大丈夫?今日のつぐみちゃん、やっぱりちょっと変じゃない?」


それは貴方が好きだからです!…なんて言えない



「大丈夫です。あっ、そうだ、これ受け取って下さい」


私は綺麗にラッピングした箱を差し出した



「これ何?」
「あっ、今日はバレンタインですから…、チョコレートです」
「ああ、そうか。今日はバレンタインか。今年もありがとう、つぐみちゃん」



…今年も、か
このチョコに込めれた想いに何の疑いもなく受け取る、悠さん



「いいえ、いつもお世話になってますから」
「お世話になってるのはこっちだと思うけどね。なのの事も道場の事もいつもありがとう」




何度目のバレンタインだろう
いつも義理にみせかけた本気のチョコ





こっそり教えてあげる





『あなたをずっと昔から好きでした』



軽く手を振り歩き出したあなたの背中にそっと呟いた





fin

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