Escape B.D






あれから相変わらず満面の笑みでチョコを食べているひーくんに見惚れていた
はぁんなんてカッコいいんだろ



「どうした?ボーッとして」
「え?は?」


気づくと顔を覗かれていた
しかもひーくんのドアップ


「ぃやぁぁぁぁぁぁ」
「うるさい。お前、確か初対面の時も悲鳴上げて逃げたよな?」



心臓ぶっ壊れるかと思った
あんなカッコいい顔が、め、目の前にあるんだから
しかも大好きなダーリンなんだよ?
パニックになるに決まってるじゃない!



「あっ、そう言えばなんで泣いてたんだ?

「は?」
「間抜けな顔してないで、答えろ」



ちょっと、泣かせた本人が聞いちゃう?
無神経というか、分かってないっていうか…



「ひーくんって本当に女心分からないよね?」
「当たり前だ。女は分からない生き物だ。特に吉野心は理解不能だ」
「ぶっ。何その吉野心って〜」
「地球外生物だからな、吉野は」
「あっ、ひどーい!!」


あたしがぶーたれていると、真剣な顔をしてもう一度聞いてきた


「で、何が原因だ?吉野が泣くなんて余程の事だと思ってな」

「あたしだって泣きますぅ。乙女なんだから…。因みに泣いた原因作った犯人、目の前に居るんですけどっ」
「………俺!?」
「でももういいんだ。超嬉しい事が今、起こってるから」
「ふうん?」
「な、何?」
「俺はてっきりあたし以外のチョコ受け取らないでー!って怒鳴り込んで来るかと思ったけどな」



………言ってよかったんだ、彼女じゃないのに



「じゃあ来年張り切って怒鳴り込むよ。ひーくんモテるからさ」
「いや、来年はそのセリフは言わなくて済むぞ」
「えー?なんで?なんで?」



質問に答えずにひーくんが屋上の出口に向かい出した



「ちょっと待ってよ、ひーくん」


出口に向かうひーくんに駆け寄るとあたしの耳元で囁いた


「来年からはお前以外のチョコは絶対受け取らないからだ。分かったか?」
「え?それって…」
「勘違いすんなよ?またお前が泣いたりしたら嫌だからだ!」


顔を真っ赤にして階段を降りるひーくんの腕にしがみついた


「危ないだろ」
「あたし達ラブラブだね
「誰と誰がだ!?だから勘違いするな」
「ホワイトデー超期待して待ってるから♪」
「期待もするな!そして一生待ってろ」
「え?一生、俺と居ろって事?それってプロポーズ?きゃあぁぁ!喜んでお受けします」



ガツン!!


「あだっ」
「調子に乗るなっ!まったく」



拳骨された頭を擦りながらあたしは思った
もしかして少しは期待しちゃってもいいのかな?って


「ボーッとしてると置いていくぞ」



5時間目終了を告げるチャイムを聞きながら、ひーくんの後に続いて階段を駆け降りた





fin



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