Escape @ − 聖side −








今日は世間ではバレンタインデーらしい

そして誰にも言えないが…今日は……………俺の誕生日だ…



不覚にもバレンタインデーに生まれてしまった
そんな自分が憎い




だから今まで誰にも誕生日を教えて来なかった
聞かれても黙秘を貫いていた(特に吉野)
男なのにバレンタインデーに生まれたなんて…恥ずかしいじゃないか!
乙女じゃないんだ、俺は





学校に登校したら、下駄箱には沢山のチョコが入っていた
勝手に下駄箱に入れていくな


そして、教室に行く先々でいらないと断っているのに女子にチョコを無理やり押しつけられ…(おまえらは吉野かっ!)

仕方なく両手でチョコを抱え込んで廊下を歩く羽目になった



チョコなどいらないし貰っても困るだけだ
『義理』ではない気持ちには一切応えられない


…いやまさか、今日が俺の誕生日だと知っての事か?
誕生日プレゼントなのか?
いや…、他言してないはずだからそれはないはずた




廊下の角を曲がった所で、一番会いたくない奴に会ってしまった


「あっ♪おはよう、ひーくん」
「ひーくんと呼ぶな。いい加減覚えろ」
「……」
「?」


吉野の目線を辿ると、俺の顔ではなく山盛りのチョコを見ていた

…ヤバイ



「これはな、吉野。無理やり渡されて、俺はいらんと伝えているのに…」


って、なんで俺、言い訳してるんだ?


「ふうん?ちゃんとホワイトデーにはお返ししないとね。じゃあね、ひーくん」



…は?それだけ?素っ気なくないか?
いや、それだけでいいんだが…

何か違う
いつものガッツはどうした?
その…なんだ…
お前はチョコくれないのか?



って、待て待て待てー!
俺は何を考えてるんだ
吉野からのチョコを期待してるとかあり得ないだろう
絶対にあり得ない


俺は溜息をつきながら教室に入った



いつもなら休み時間毎に俺に会いに来る吉野が、今日に限って一度も来ない…

代わりに来るのは誰だか知らない女子ばかりだ



昼休みになり俺は半ば諦めとやけくそでチョコを受け取っていた



「下野ー、いいのー?吉野が怒るんじゃない?」
「何がだ?」
「チョコだよ。こんなに受け取っちゃって、どうするの?」
「知らん。それに吉野は…関係ないだろ」
「…そうだね。要りもしないチョコを受け取って、はっきりしない態度の今の下野には吉野も呆れてるかもね」
「なんだと?北条、お前はケンカ売ってるのか?」


俺は北条に睨みを利かせた
でも北条は当然、俺に怯む訳もなく涼しい顔で止めの一言を言い放った



「今日の下野は超カッコ悪。…ヘタレ乙女(ボソッ)」

北条はそのまま教室を出て行ってしまった



北条が怒るのも当然だな
自分でも分かっていた
今の俺は最低だ

でも俺と吉野はまだなんの関係でもないんだし、吉野に怒られる理由など…ないんだ



スッキリしない気持ちを整理する為に俺は屋上へと向かった





普段誰も居ない屋上に人影があった

…吉野?あいつ、あんな所で何してんだ?


よく見ると泣いている
俺は考えるより先に走り出していた




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