サンタさんからのプレゼント予告






夏恋さんに仕事を教えてもらったあの日から、土日は蒼お兄ちゃんの店を手伝うようになった

棚ぼた的に紫センパイも一緒に働く事が決まり、あたしは嬉しくて仕方がなかった



「ありがとうございました〜♪」


お店のドアを開けて最後のお客様をお見送りした



「なのちゃん、もう完璧ね」
「えへへ。夏恋さんの指導が良かったからです」
「そんな事……、あるかしらね。私だし」
「あははは」
「うふふ。でもなのちゃん、筋がいいのよ。接客業に向いているわ」
「ありがとうございます。なの、この調子でクリスマスまで頑張ります」


夏恋さんにイイコイイコされたのち、閉店作業をしていると店のドアが開いた


「すみません今日はもうへ…」
あたしの言葉を遮り夏恋さんが声を上げた

「拓未、お帰りなさい」
「うん、ただいま。夏恋」


あたしがパチクリしていると優しい顔をしたその人はあたしと目線を合わせて話しかけてきた


「もしかしてなのちゃんかな?えーと、僕の事憶えてるかな…?君のお兄さんの友人の小野拓未って言うんだけど」
「…おの…たくみ…さん…。あー!確か旅行代理店に務めていて、お土産にいつも変なの買って来る人だ!」
「正にその通りよ、なのちゃん」
「なのちゃんも夏恋もひどいな〜」


あたし達が笑い合っていると、蒼お兄ちゃんが不機嫌な顔でホールに現れた


「夏恋も拓未も俺のなのに何してるんだ」
「ただ話してただけよ」
「相変わらず溺愛してるんだね、蒼は」
「当たり前だ。なのは世界一可愛いからな!それはそうと久しぶりだな、拓未。帰って来たのか」
「うん、ただいま」


拓未さんも蒼お兄ちゃんの高校の同級生
旅行代理店勤務という事で、世界中を飛び回っているらしい


「はい、今回のお土産」
「…これ、何?」
「魔除け。クリスマス近いし」
「…クリスマスと魔除けは関係あるの?」
「夏恋、綺麗だし。男がほっとかないでしょ?僕が居ないとき用の男除けって事」
「もう、拓未は心配性なんだから」
「心配になるよ。夏恋の事大好きだから」
「わあ、ラブラブだぁ♪」
「相変わらず仲の良いこった。外でやってくれ」


夏恋さん、真っ赤になって可愛い
普段はクールでハキハキしてるけど、恋する乙女なんだよね


「後の片付けはあたしがしますから、夏恋さんは上がって下さい。拓未さんとデートして来て下さい」
「なのちゃん、ダメよ。仕事はちゃんとしないと。拓未、近くのカフェで待ってて」
「うん、そのつもりだったし。ではみんなまたね〜」
「おお、またな」
「さようなら〜」


拓未さんを見送った後、テキパキと仕事を終わらせて夏恋さんは笑顔で拓未さんの元へと向かった


「なの、俺達も帰るか」
「蒼お兄ちゃん、今日はもう帰れるの?」
「ああ、今日は終わりだ。だから、なのデートするぞ!」
「やだ、お家に帰るー」
「頑張ってるお兄ちゃんにもクリスマスプレゼントが欲しいー」
「クリスマス終わってからじゃダメなの?」
「(響が居ない)今日がいい」
「もうワガママだなー、蒼お兄ちゃんは(響お兄ちゃんとの約束もあるし、付き合うか)」
「デート♪デート♪なのとデート♪」



そうだ、そろそろ決めなくちゃひーくんへのクリスマスプレゼント!
何にしようかな?
そんな事を考えながら、蒼お兄ちゃんのわがままにその夜は付き合った




そして次の日、なぜか翠お姉ちゃんに起こされた


「おはよー、なのちゃん」
「…おは…よ…」
「あら、ちょっとお疲れ気味かしら?なのちゃん、聞いてるわよ〜。蒼くんのお店のお手伝いを頑張ってる事」
「…うん」
「そんな頑張ってるなのちゃんにサンタさんから超素敵なクリスマスプレゼントが届くから楽しみに待っていてね♪」



パチンと音が鳴りそうなウィンクをしてニコッと笑った、翠お姉ちゃん
………絶対、とんでもない事企んでるはず




サンタさんからのプレゼント予告




「そーいえば、翠お姉ちゃんなんでここにいるの?」
「今から日本を離れるから、なのちゃんの顔を見ておこうと思って」
「クリスマス日本にいないの?」
「ごめんね、なのちゃん。今年のクリスマスはあっくんとパリで過ごすのよ♪寂しいだろうけど、いい子に待っててね」

そしてあたしの頬っぺに濃厚なキスを残して、翠お姉ちゃんは部屋を出て行った




「翠!お前店を手伝えと言ったろ」
「これからあっくんとパリに行くのよ。ごめんあそばせ♪」
「くっそー!」



廊下から蒼お兄ちゃんと翠お姉ちゃんのやり取りを聞きながら、あたしは今日もpetite cerise nanoで頑張る為に気合いを入れ直した



クリスマスイブまであと3日…





fin
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