美研会長 村上京介の憂鬱。



僕。村上京介は小出高校の伝統ある美少女研究(同好)会。通称 美研の会長だ。

歴代美少女の膨大な資料は、のちに芸能人や女子アナになったり、国会議員になった女生徒だけでなく、街で評判の美人女将までOG総ての美少女を網羅してるのが自慢だ。


ついでに言うと僕は、写真部の部長も兼任している。



写真部は、新人写真家の登竜門である木村伊兵衛賞を受賞したフォトグラファーを何人も輩出している。


フィルムカメラは、今のデジカメと違いお金が掛かるのだ。まず撮った画像は その場でチェック出来ない。必然的に撮影する枚数が増える。

その為。昔から健全な資金調達の手段として校内行事の写真撮影販売が許可されている。さらに卒業アルバム用の撮影を業者じゃなく、写真部に学校から依頼されているのだ。

経費削減という意味合いが強いのかもしれないが…、写真技術を学校に高く評価されているとも言える。




美少女達を学校公認の元、堂々と撮影出来る故に 代々写真部部長は美少女研究(同好)会の会長と兼任しているのだ。

部よりも同好会の方が格上扱いなのは…美人を嫌いな男などいないからだ。

しかしながら…世間受けは なかなか厳しいゆえに 写真部と兼任。というスタンスが確立された。


なんせ美研会員の方が、被写体に対する写真技術については貪欲なのだから同然の結果と言えよう。





去年復活した文芸部は かなりの高レベル。美少女率 ぶっちぎりの1位。

無論。我々美研の関心は高い。
しかし…だ。ここで マサカの問題発生だ。




1ーC 吉野なの 身長156cm 体重は……コホン。省略しよう。


こやつが、全ての原因だ。




一度は 我が美研が発行する 小出高校美少女リストに載せる候補に挙がったのだか…


まもなく却下した。
顔は問題なく可愛いのだが…、美少女と呼ぶには あまりにも慎みがない。


毎日、髪を振り乱し…無駄にデカイ胸を揺らして校内を走り回る姿は 美しくない。

さらに その暴走はある男子生徒を追いかけて…との噂だ。




更にさらに アニメ同好会は彼女を"神"と崇めている。
なんでも"ストーカー萌えの神が降臨なされた〜"なんだそうだ。

振られても振られても、挫折を知らないその愛は一途で純粋。究極の愛なんです!と力説された。



全く理解出来ない上に、アニメ同好会は、その愛ゆえにフィギュアを作ろうと"萌え神"を盗撮し…そのとばっちりが、此方まで来た。

同じく文芸部辺りを うろうろしていた我が美研も調べられ…


やはり生徒会長 宮本浩輝の彼女。文芸部部長 相澤かんなの写真も隠し撮りした事が 一番不味かったのだろう。

ぶちギレした生徒会長に 美少女研究(同好)会はおろか、写真部まで廃部にされそうになった。


しかしながら、写真部は卒業アルバム制作の為。写真撮影は許可されている。

なので渋々といった風情の生徒会長によって 我々は終日旧校舎及び中庭。放課後は中庭に続く廊下に接近禁止令が出されたのだ。


生徒会長のあの剣幕では、次は確実に廃部にされるだろう。
伝統ある美研。及び写真部を僕の代で途切れさせる訳にはいかない。


今日も元気に走り回る彼女を見て、僕は盛大に溜め息をついた。
あの一件以来、やたらと目について…正に目障りだ!
一言文句でもつけてやろうと 柄でもなく僕にとっては"疫病神"な彼女の後を追いかけて…………見失った。




クソッ……。
追いかけるから駄目なんだ!と僕にしては 珍しく熱くなった事を反省しつつ、翌日 待ち伏せた。



まるで疾風の如く現れた 吉野なのに

不覚にも 僕は─────────





きらきら煌めく瞳。
花が綻んだような 満面の笑顔に……


一瞬 心を奪われた。





だが次の瞬間。黒い袴を履いたある男子生徒に抱きついた彼女を見て僕は正気を取り戻した。

彼女は、いつものように涎を垂らさんばかりの しまりのない見慣れた笑顔を浮かべていた。





……なんて事だ!
ちょっとキュンとしてしまった。



でも…まぁ来年は リストの末席にでも載せてやらないことも…ないかもしれない。

美の基準は時代と共に変わっていくのだ。新しい萌えとやらにも 多少は敬意を払ってやらなくてはいけない時代が来ているのかもしれない。




それに…だ。

顔は元々…リストに1度は載るほど可愛かったのだから……うん。まぁ やぶさかでは あるまい。



僕は誰にともなしに 言い訳めいた言葉を呟きながら赤くなった頬を誤魔化すように 眼鏡を上へと押し上げた。


ちょっと…ギャップ萌えってヤツをしただけだ。けして惚れた訳ではない。
断じて 惚れた訳ではないのだ!







fin


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