蒼お兄ちゃんの頼み事 |
ある日の夜、一家団欒中にそれは起きた 「みんな、一生のお願いだ!どうか俺に協力して欲しい!」 「何?蒼ちゃん。土下座なんかしちゃってさ〜」 「気持ち悪い事をしないで下さい」 「残り1個のチェリーパイ、なの食べていいー?」 「食べ過ぎだよ、なの」 「えー、なの食べたいー」 「悠、いいじゃん。なの姫あーん♪」 「あーん♪」 「俺の…、俺の話を聞けー!!」 蒼お兄ちゃんの怒声がリビングに響いた 蒼お兄ちゃんの頼み事 「だから何ですか?大声出して」 「俺達に頼み事〜?」 「そうだ!なのやお前達に頼みがある」 「頼み事?なあに?蒼お兄ちゃん」 蒼お兄ちゃんは少し言いにくそうに話出した 「俺の店、【petite cerise nano(プチ スリ−ズナノ)】は今年初めてクリスマスを迎える…。クリスマス間近から戦場になるだろう。それでだ…、どうか12月の土日、21〜25日までの5日間の時間全てを俺にくれ!みんなの協力が不可欠なんだ!今年のクリスマスは俺と俺の店に捧げて欲しい!!」 「嫌だよ〜」 「嫌です」 「いや〜」 間髪入れずに私達の答えがハモった 「…え?みんな?おかしいな…、もう1度聞くよ? 俺の店を手伝って欲しいんだ。お願い出来るかな?」 「うわー、蒼お兄ちゃんの笑顔キラキラしてるー」 「必殺技の王子様スマイル〜」 「でも僕達には効きませんよ」 「チッ、お兄ちゃんの頼みだよ?なんで聞いてくれないの?」 「だって俺、本業で忙しいし〜。イブとクリスマスはなの姫とデートだし〜♪」 「僕は論文書いたり、勉学があるので無理です。それと奏兄さんの発言を訂正すると、イブとクリスマスになのと過ごすのは僕です」 「イブとクリスマスは無理だよ?なのはひーくんとデートする予定だもん♪クリスマスプレゼント何にしよーかなー♪」 「なのは除き、お前ら好き勝手言いやがって…。これは長男の絶対命令だ!手伝え!身を挺して働けー!」 「出た!こんな時だけ長男風吹かせちゃう、ダメダメ蒼ちゃん」 「逆ギレですか?人に頼み事をする態度とは思えませんね」 「うぐ…」 蒼お兄ちゃんが2人に勝てるはずないのに… 見兼ねてあたしは思った事を口にした 「蒼お兄ちゃん、臨時バイトとか雇えばいいじゃない?」 「なの〜、そう思って募集したんだけどね、みーんな使えない子ばかりで辞めてもらっちゃった。テヘ♪」 …ダメじゃん。蒼お兄ちゃん 「テヘ♪じゃないですよ!自業自得じゃないですか!?」 「自分で何とかするしかないんじゃな〜い?」 「だから、お前達に頼んでるんだろ!」 「だからなんでそんなに偉そうなんですか?」 「長男だからに決まってるだろ!」 「本当にバカだよね〜、蒼ちゃんは」 あーもー… どうしようか悩んでいたら、リビングのドアが開いた 突然現れた人は紛れもなく救世主で…、あたしはその人に抱きついた 「響お兄ちゃん♪」 「なのちゃん、今晩は。皆様も夜分遅くに失礼します」 「やっほ〜、響ちゃん」 「今晩は、響さん」 「…来たか」 リビングに入り、礼儀正しく挨拶をする響お兄ちゃん そして、蒼お兄ちゃんに断りを入れて喋りだした 「社長から話は伺ってると思います。皆さんにご迷惑をおかけしてしまうのは本当に心苦しいのですが、どうか今年だけ皆様のお力を貸して頂けないでしょうか?お願い致します」 丁寧な口調で深々と頭を下げて頼む響お兄ちゃん 「響ちゃんの頼みならいいよ〜」 「僕も大丈夫です」 「もっちろん、あたしもオッケーだよー」 「ありがとうございます。良かったですね、社長」 「ちょっと待て、お前ら…。俺の頼みは聞けないが、響の頼みなら聞くのか?」 「あったりまえじゃん♪」 「当然です」 「大好きだもん、響お兄ちゃんの事」 「なの〜、蒼お兄ちゃんの事は好きじゃないの?」 半泣きであたしに縋りついてくる蒼お兄ちゃん… 「大好きだよ(蒼お兄ちゃんが作るチェリーパイが)」 「うーん、いい子だ、なの」 「どーりで今日のデザートが豪華だと思ったんだよね〜」 「魂胆見え見えでしたね」 「うっさい!あっ、なのには可愛い可愛い衣装用意するからね〜」「マヂ?蒼ちゃん。なののサンタコス、超可愛いだろうね〜♪」 「なの、嫌なら着ることないからね」 「俺の楽しみを取るな!」 「そうだそうだ!」 「馬鹿馬鹿しい…」 またあたしを取り囲んでやんや始まってしまった 真ん中で固まっていると、腕を優しく引っ張られ響お兄ちゃんに保護された 「困ったお兄さん達ですね」 「本当だよ!響お兄ちゃん」 「あと個人的にお願いがあるんですが、聞いてもらえますか?」 「響お兄ちゃんのお願いならいいよ」 「ありがとうございます。クリスマスが終わるまで社長のモチベーションを保たせる為になのちゃんの力が必要です。是非ともご協力を」 「うん、頑張る」 あたしと響お兄ちゃんがいい雰囲気なのに気づいたお兄ちゃん達がまた騒ぎ出した 「あっ、こら響!俺のなのに何、耳打ちしてやがる!」 「響ちゃ〜ん、抜け駆け禁止〜」 「意外と侮れませんね、響さん」 3人に攻撃されてもすまし顔の響お兄ちゃん さすが長年、吉野家と付き合っているだけはあるよね 「そうだ、皆さんのお友達でお手伝い出来そうな方がいましたら、是非お願いします」 蒼お兄ちゃんとはまた違うスマートな笑顔で話題を元に戻した、響お兄ちゃん さすが蒼お兄ちゃんの親友 そして、いきなり拳を上に突き上げた、蒼お兄ちゃん 「さあ、今こそ吉野家の絆の強さを見せる時だ!力の限り働こう!エイエイオー!」 蒼お兄ちゃんが張り切れば張り切る程、空回りしてる事に全く気づかない幸せな人、それが吉野蒼だ… あたし達、吉野家のクリスマスへの戦いが始まった fin |