彼女はどこまでも丸見えである。






麗らかないつもと同じの放課後のこと――。

いきなり志乃が叫びだした。
そして両手で目を隠す仕草をして慌てふためいている。

「きゃあっ!」
「どしたの、志乃ちゃん!?」
「何事!?」

部室にいた一同が志乃の叫び声に大きく反応した。
普段は大きな声を出さない彼女に一大事なのではないかと周りはどよめく。

「……なのちゃんの……。」
「なのっちの?」

指を小刻みに震わせながら志乃はなのの方を指を差した。紫はその震える指にそっと手を添える。

「ス……ス……。」
「ス?」

かんなも志乃の言葉を拾おうと懸命になる。

「……スカートの後ろが……。」
「うん?」





そして大いに両手で顔を隠して志乃は叫んだ。

「なのちゃんのスカートの後ろが丸見えなのっ!」

指摘をされたなのがきょとんとする。そしてみるみる顔が真っ赤になってゆく様を志乃と紫、かんなの三人は見た。

「あっ!ホントだ!なのっち丸見え!」
「あらやだ、本当!」

紫とかんなも口を押さえてなのを見て叫んだ。なのはバッとスカートを両手で押さえると二、三歩後退り、耳まで真っ赤に染まった顔で今度は志乃に叫び返す。

「や、やだっ!先輩、いつからですか?ねえ、いつから丸見えだったんですか?さっきひーくんに会ったのに……。もしかして見られた!?見られたの!?水色の水玉を!?拠り取りみどり千円の下着をー!」

一人で勝手に次から次へと喋ってくれたなのに三人はニヤリと口角を上げた。

「あらあら、なのちゃんの下着は今日水玉なの?」
「へー、拠り取りみどり千円は凄いな。」
「水色って言うのも可愛い色だね。」
「下野になのっちの下着は水色の水玉でーすって報告していい?」

とても良い笑顔で詰め寄る先輩三人になのはただただポカーンとするだけである。
謎解きもそろそろか、と志乃は人差し指を立てて述べた。

「アタシが言ったのは『スカートの後ろ』が丸見え、だよ。」
「スカートの後ろなら皆が丸見えよ、なのちゃん?」
「誰もスカートが捲れてるなんて言ってないから。」

三人のしたり顔にポカーンとしていたなのも今度はきちんと事態を飲み込んだようで、再び顔を真っ赤にした。

「……っ!もう、先輩たちっ!あたしで遊んでるでしょ!」
「うん。」

憤慨したなのの問いに三人は当たり前のように綺麗に声を揃えて二つ返事をした。

「んーもーっ!」

今日も部室には誰かの叫び声が響き渡る。





彼女は
どこまでも丸見え
である。


(クスクスクスクス……。)
日常 かんな 志乃 なの 紫1 
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