小出高校の男子高校生の日常 -体育祭競技決め編-



 


 部活は文化祭で盛り上がるが、クラスが盛り上がるのは体育祭。
 そしてウチのクラスは何故だかやけに盛り上がっていた。



「サッカー部のホープ・中上素直と松嶋正直の『Wナオ』と、スポーツ万能の下野、そして北条……!」
「優勝有り得るぞ!」
「おおーっ!!」

 ……他力本願で盛り上がるの、止めようよ。



「あ、僕、部活が忙しいから向こうを優先するんでヨロシク」

 そして盛り上がる1−Aの面々に水を差したのは、他ならない僕だった。



「お前はクラスの盛り上がりに水を差すな!」

 即座に中上がツッコむが――僕はニッコリと笑って、予め用意しておいた言葉を口にした。

「男女混合とか、そう言うのは全部、中上と松嶋に任せるから。頑張って」
「思いやりっぽい哀れみは要らねーよ!」

 と、これは松嶋。

「じゃあ二人三脚とか出ないの?」
「「出る」」

 今度は二人揃って即答。……二人三脚の枠って各クラス一組だった気がするんだけど。まあいいや、どっちでもいいから頑張って。






 男女混合でなくて、できれば団体競技じゃなくて、なるべく練習しなくていい競技……

「……って何があるかな?」
「知るか。自分で考えろ。ってか、出ろ」

 問いかけに対する下野の答えはにべもない。ちぇー。僕は黒板にリストアップされていく競技を眺めた。
 体育祭は各学年のクラス毎に競うらしい。僕はA組、紫サンもA組。紫サンと一緒にできる団体競技ってないかなあ。縦割りでやる競技は……綱引き、騎馬戦、それからリレーか。騎馬戦は男子のみだし、リレーくらいかなあ。でもリレーはもういいや。
 僕は個人競技に狙いを絞った。……のに。



「じゃあ騎馬戦とかどうだ?」

 口を挟んできたのは、中上だった。
 僕はちょっとだけ首を傾げてから、口を開いた。

「僕が騎手ならいいよ」
「は? 有り得んだろう。なんで一番背が高いお前が騎手なんだ?」

 下野が眉を潜める。ま、当然だよね。

「馬に必要なのは強固さとバランスだと思うんだよね。例えばこの面子で騎馬を組むとする。それで僕が馬になったら、馬のバランスが崩れちゃうもん」
「何でだよ」

 首を傾げた中上に、僕は逆に尋ねた。

「中上さ、身長何センチ?」
「173」
「松嶋は?」
「175だけど」
「下野は……169?」
「170は到達したっ!」
「でしょ。ほらバランス取れてる」

 下野の顔に『釈然としない』ってハッキリ書いてある。それでも反論しないのは、僕の言い分に理があると思っているからだ。
 ま、本当は詭弁なんだけどね。

「僕、背の割にはそんなに重くないと思うし。でも上背あるから他の騎手を狙いやすいし……」

 詭弁の上にさらに詭弁を重ねた途中で、中上がグッと拳を握りしめて立ち上がった。



「よし! じゃあオレたちが馬になる! 最強騎馬伝説の幕開けだ!」
「応っ!」

 その気になった中上に、すぐに松嶋が呼応する。……本当に素直だよね、中上って。名前の通り。
 僕はまだ釈然としない表情の下野に、からかい混じりに声をかけた。



「下野ー、ノリが悪いよ?」
「知るかっ」
「出るの? 出ないの?」
「……まさかさっき北条に『出ろ』って言っときながら、やっぱり自分出ませんとか女々しいこと言わないよな?」
「オトコに二言はないよな?」

 中上と松嶋の援護射撃を受けて、下野はわしわしと頭をかき混ぜた。そして何故か僕を睨む。

「……わかった。出てやろう。その代わり負けたら……北条。その時はお前の理屈を全否定してやる」

 いいよ、別に。どうせ詭弁だし。



 中上がクラス委員の横山に、騎馬戦の出場を告げている。僕は書かれていく名前を眺めながら、他は何に出ればいいかな、とか、紫サン何に出るんだろう、とか、騎馬戦の騎手って初めてだから楽しみだな、とか、色んな事を考えるともなしに考えた。






小出高校の
子高校生の
日常 

-体育祭競技決め編-



(あ、借り物競争ってあるんだ)
(あるけど、出高の借り物競争ってえげつないモノばっからしいぜ)
(ふーん……あ、横山、下野が借り物競争に出るってさー)
(ほい来た了解)
(なっ……北条! 横山も書くな!)
(もう書いちゃったよー。借り物競争は下野で決定なー)
(書いちゃったよー、じゃねえ!)


 
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