体育祭 仁義なき戦い 二人三脚編 上



二人三脚−
それはクラス代表の男女ペア一組が激走する、仁義なき戦い




体育祭
仁義なき戦い 二人三脚編−上−




【1ーA】


「どなたか男女ペアの二人三脚に出てくれる人はいませんか?」
「「はい!!」」


綺麗にハモリ、同時に手を上げたのはサッカー部コンビの中上と松嶋の二人だった


「あいつらヤル気あるなー。さすが運動部だな。な?北条」
「うーん、ちょっと違う気がするよ?下野…」
「なんでだ?」
「男女ペアだからだよ」
「は?」
「女子と密着出来るからでしょ」
「なんなんだ!そのふしだらな理由は」
「あっ、ジャンケンで中上に決まったみたいだね」
「ガッツポーズしてるぞ、アイツ…」
「A組は中上&森下ペアかあ。他のクラスは誰が出るんだろうね〜?C組は吉野だったりね」
「そんな訳がないだろう」
「あれー?吉野が男子と密着するのが嫌とか?」
「嫌な訳がないだ
ろうが!勝手な事を言うな、北条」
「相変わらず素直じゃないよね」
「ふんっ」




【1ーC】


「ではC組は羽田野くんと吉野さんに決定しました〜」
「へ?あたし?」
「吉野ちゃーん♪俺と愛の二人三脚頑張ろーね」
「えー、ヤダ」
「ちょっとヤダとか、傷付いちゃうよ〜」
「なんで、あたしなの?」
「ほら、吉野ちゃんはいっつも走ってるしさー、二人三脚の途中ではパンを口でくわえて取るじゃん?パン好きだよね?」
「大好き!」
「よし、頑張ろうーね!」
「うん♪」


ああ…、なの、羽田野くんに騙されてるよ


「なの大丈夫?」
「つぐみちゃん!あたし、パンの為に頑張るからー!」
「……頑張れー…」


目的が全くもっておかしいけど、まっ、いいか…
でもなのは気付いてないだろうけど、羽田野くんに狙われてるよ
手が早いって有名だし、本当に大丈夫かな…



「吉野ちゃん、これから体育祭まで毎日二人三脚の練習しようねー♪俺が(手取り足取り)教えてあげるからねー」
「パン食べたーい♪」


……本当に心配なんですけどっ!




【2ーE】


「無理です!」
「佐伯だけだったからなー、競技に出る種目が決まって無かったのは。だから頑張れー」
「よりによって二人三脚なんて無理です!絶対に無理です!」
「じゃあ、クラス対抗選抜リレーに出るか?」
「………二人三脚でいいです」
「よし、決まりな」
「でも、無理ー!」


志乃の叫びは空しく、2ーEの二人三脚女子は志乃に決まった




その日の放課後−

【1ーA廊下前】


「おーい、下野ー」
「なんだ?中上」
「さっき聞いたんだけどな、C組の二人三脚は吉野が出るんだと」
「はあ?なんでアイツが…」
「で、問題はその相手でさ…」
「男子か?」
「うーん…、羽田野って言ってね、手が早いって有名な奴でさ。気に入った子は絶対手に入れるって話なんだ」
「でもそいつが吉野を気に入ってるとは限らないだろう」
「いやー、吉野をご指名だったらしいよ」
「………」
「し、下野?」
「だからなんだ?俺には関係ない!せいぜい吉野に負けないように頑張るんだな、中上」
「ちょっと!下野っ」

いつものように颯爽と廊下を歩き部活に向かってしまった


「素直じゃないよね〜、本当に下野は」
「北条か。びっくりした」
「これは暫く見物だね〜」
「…北条実は楽しんでる?」
「まあね」



本当に早く素直にならないと、知らないよ?下野…




【文芸部】

「志乃ちゃん、二人三脚にでるのか!?」
「そうなの紫ちゃん〜」
「まあ、頑張るしかないよ」
「うう…」


机に伏せて「無理無理」を繰り返す志乃ちゃん
運が悪かった…としか言えない…


「かんなちゃんは何に出るんだ?」
「私は古今東西張りきり玉入れにでるのよ」
「…なんだそれは?」
「生徒会役員と部長のみ参加の玉入れよ。体育祭で文科系の部長がこの種目さえ出れば、他は出なくていいのよ」
「ズルい!」
「あら、ズルくないわよ?志乃ちゃん。まあ部長の特権かしらね」


二人は宮本の力が働いたと直ぐに分かった



「センパーイ!あたし、二人三脚に出る事が決りましたー」


扉を豪快に開けてなのっちが入って来た


「なのっち!扉は静かに開ける」

「はい、すみません!」
「全然悪いと思ってないだろう」
「ねえ、なのちゃん?二人三脚に出るって言った?」
「言いましたよー、志乃センパイ」
「…そう…なのちゃんも出るの…」


呟いたかと思ったら、バタリとまた机に伏せ倒れた


「志乃センパイどうしたんですか?」
「志乃ちゃんも二人三脚に出るらしいんだ」
「本当ですか?わーい♪なのと一緒〜♪頑張りましょうね、志乃センパイ!」


拳を上に突き上げて「エイエイオー」を繰り返してる、なのっち

机に伏せ倒れ「無理無理」を繰り返してる、志乃ちゃん


私はかんなちゃんと体育祭が無事に過ぎ去る事を心から祈った






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