Love is blind.



 


 賑やかな場所や華々しい催しは苦手だし嫌いだ。

 だけど今までに出たどんなパーティーよりも、



 今日のこの集まりは、面白くないことこの上ない。






Love is blind.
Love is blind.



「HAPPY BIRTHDAY、志乃ちゃん!」
「おめでとう、志乃ちゃん」
「あたしからのプレゼントですっ! どうかなのをもらってくださ……」
「佐伯センパイ、おめでとうございます。戯言を抜かしてる吉野は責任持って沈めておきますから。下野が」
「どうして俺が!?」
「だって僕が手を下したら、下野、怒るじゃん」
「相変わらず賑やかしいな。……佐伯、誕生日おめでとう」
「ありがとう、みんな。とっても嬉しい!」



 今日は志乃の――俺の彼女の誕生日で。
 今日のパーティーの主役は当然、彼女で。

 ……すべてが彼女を中心に動いてる。



 俺は、それが、とても、気に入らない。



「じゃあ、乾杯しましょうか」
「北条、なの、みんなにジュース回したげて」
「はい、志乃センパイ。あたしの愛情たっぷりジュースをどうぞ」
「ありがとう、なのちゃん」
「今回は酒を仕込んでないよな、北条?」
「……やだなあ下野。そんなことしてないってば」
「その間は何だ!」
「えー、ないの? なの飲みたいなあ。てか志乃センパイに飲ませたい!」
「生徒会長の俺の前で違法行為の話をするな!」



 ……面白くない。
 甚だ面白くない。

 ドロドロ、黒い気持ちがせり上がる。



 志乃は――彼女は、






「それじゃ乾杯の音頭を……部長、お願いします」
「紫ちゃん、そんな畏まらなくっても……」
「かんなセンパイ、あたし早く飲んだり食べたりしたいですぅ」
「はいはい。じゃあ、志乃ちゃんの誕生日と、それを祝えるわたしたちの幸運に……乾杯!」
「乾杯!!」



 皆が皆、次々と志乃のグラスに自分のグラスをぶつけていく。その都度照れながらも嬉しそうに微笑む彼女の、その微笑みは自分以外に向けられていて――






 ――志乃は、俺のだ――!






 俺はグラスをぶつける前に、手にしたそれを一気に飲み干した。喉を焼く熱い感覚は、決してソフトドリンクのそれではない。
 目の前で志乃が目を丸くしている。せんせい、彼女の口は動いているのに、ドクドク、アルコールに浮かされた自分の鼓動の音が煩くて、彼女の声が聞こえない。



 俺はグラスを投げ捨てると、空いた両手で彼女を抱きしめた――










   ガシャ──────ン



 高音の綺麗な音が、室内に鳴り響いて歓談のざわめきが止まる。

 皆が茫然・唖然としてる隙に 志乃の腕を掴み、引きずって出て…車に乗せようとして、気づいた。

 チッ…アルコ―ルを口にしたんだったな。

 駐車場へと向かっていた足を止めて、表通りへと身を翻した。



 志乃を 絶対に逃がしたくはないから、一瞬でも腕を離さずに済んで却って 丁度良かったか…。

 俺にアルコ―ルを飲ませたアホに感謝しかけた刹那、それを即座に否定した。
 俺の志乃に べたべたベタベタしやがった奴に! 感謝なんて全く…馬鹿げている。




 志乃の腕を掴んだまま、押し込む様にタクシーに乗り込み、俺の住所だけを告げる。


 志乃の不安げに俺を見上げるその瞳に加虐心が煽られ、独占欲じみた欲だけが次々と湧いてくる。


 この娘の瞳に映るのは、俺だけでいい!俺しか映さなければ良いのに───






 静かに走るタクシーの車内には、甘さだけじゃない ナニかを孕んだ視線を交わし見つめあう俺達の吐く息だけが響いていた。





 やがて小さく軋む音と共に振動が止む。


 俺は千円札を数枚、放り投げるように運転手に渡すと、相変わらず黙ったまま志乃を俺の部屋に連れ込んだ。




 ガチャ。鍵が閉まる金属音を合図に、志乃を玄関のドアに押しつけ 思うさま唇を奪う。
 戸惑いながらも たどだどしく俺の口づけに応えて舌を動かす志乃は可愛かった。


『 っ……、ふぅ…んっ …… 』



 掻き抱き俺の腕の中に閉じ込めれば、愛しさが募るばかり




 自分の絶対的テリトリーに志乃を入れてしまえば、安堵する自分におかしくて笑えてくる。



 額を合わせ、先ほどの激しいキスに呼吸を奪われ滲んだ涙を親指の腹で、そっと拭いながら

「志乃は、ぜ〜んぶ俺の! 誰にもあげない!!」

 そう囁き、啄むようなキスを繰り返す。志乃の頬をいとおしむ手と反対側は、志乃の華奢な身体のラインをなぞり 下へと降りていく。


 志乃の膝裏に手を入れて抱きあげると寝室へと向かった。

 俺の愛を あますことなく教えてあげるよ。





 
日常 かんな 志乃 なの 紫1 
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