1人でお留守番出来るもん!





おっきい声では言えないけれど、あたしは未だに1人でお留守番が出来ない

そう、高校生になった今でも…



「え?かんなセンパイこれから会議ですか?」
「そうなのよ。紫ちゃんも志乃ちゃんも委員会で今はいないし、なのちゃんお留守番お願いね」
「え゛!?北条くんは?」
「北条くんも委員会じゃないかしら」
「……今日弓道部のほうへ行ってもいいですか?」
「いいわよ?でもそれは今月の原稿仕上げてからのセリフよね?」
「かんなセンパイ、笑顔が怖いですぅ…」
「じゃ、しっかりお留守番頼むわね」


かんなセンパイって癒し系なのに、時々笑顔が怖い…
でも大好き!


かんなセンパイが居なくなった部室にあたし1人…
メチャクチャ淋しい
お留守番が出来ないっていうか、1人が苦手〜


原稿を仕上げるのには丁度いい環境なんだろうけど、あたしにはこの静けさが無理


窓から顔を少し出して外を眺める
あっ、椎名先生発見
花壇の前にしゃがみこんで微動だにしない
………生きてるよね?
うん、大丈夫なはず

ぎゃっ!目が合った
何か呟いてる…?
あいにく読心術は持ち合わせて無いので無理です
ごめんなさいをして顔を部屋に戻す


相変わらず静か
誰か!誰か、早く帰って来て〜


「はぁぁぁぁぁぁぁ…」
長い溜息をつくと、入り口から声がした

「弓道部も文芸部どちらもサボるとはいい身分だな」
「ぎゃああああ!ビックリさせないでよ、ダァーリンッ」


愛しのひーくんがツカツカと窓際まで歩いて来て、あたしに拳骨を一発お見舞いしてくれた


「いっったぁ〜い」
「誰がダーリンだ!」


涙目になっているあたしを気にせず、会話を続ける


「文芸部の活動がないのなら弓道部に来い」
「行きたいのはやまやまなんだけど…、原稿仕上がってないから行けないの」
「どう見ても原稿書いてるようには見えなかったが?」
「外を見ながら考えていたの」
「嘘をつけ。それに誰も居ない事だし、今日は弓道部に来い」
「あたしが居ないと淋しいのね?ひーくんったら」
「…お前、本気で殴られたいのか?」


あたしを見つめる鋭い眼光もカッコいい
でもこれ以上怒らせたらさすがにマズいか…も


「下野くん、ごめんなさい。今日は弓道部には行けない。かんなセンパイにもお留守番頼まれたから」
「お留守番って…、何だそれ」
「あたしね、実はお留守番って未だに出来ないの」
「は?」
「小さい頃から1人になる事が苦手でね。でももう高校生だしお留守番くらい出来ないといけないし!」
「だからなんだ?」
「今日はセンパイ達が帰って来るまで頑張って1人でお留守番したいの」
「……解りかねる理由だが、いいだろう。今日は見逃してやる」
「ありがとう、ひーくん」
「だから、ひーくんと呼ぶな!」
「明日は弓道部にちゃんと行くから、弓道教えてね?下野コーチ♪」
「……ああ。じゃあ俺は部活に行くな」


俺はそそくさと、文芸部を後にした
きっと今、顔が赤いはずだ
俺としたことが、不覚にもさっきの吉野を可愛いなどと思ってしまった
くそっ

精神統一してから今日は一射しよう





「さっき、部室から出ていったのは下野じゃないか?」
「そうだね、なのちゃんに用事でもあったのかな?」
「また弓道部に連れて行こうとして、失敗したんだろう」
「でも下野くん…、顔が赤くなかった?」
「そうか…」
「紫ちゃん、いい笑顔〜」
「志乃ちゃんこそ」



センパイ2人の企みに気づかず、なのは1人お留守番を頑張っていた


1人でお留守番出来るもん!
(センパイ達が戻って来たら、イイコ、イイコしてもらおー♪きゃは♪)





fin
日常 かんな 志乃 なの 紫1 
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