奏の探偵File 天誅 A







翌日−



「北条くん、奏お兄ちゃん引き受けてくれるって」
「本当に助かるよ。ありがとう」
「で、天誅下す相手の情報とかって今日持ってる?」
「ああ、これに書いてあるからお兄さんに宜しくお願いしますって伝えてくれるかな?僕の連絡先も書いてあるから」
「用意がいいね、さすが北条くん」
「まーね。とにかく宜しくね、吉野」
「……」
「吉野?」


吉野にしては珍しく、深刻な顔をしている
どうしたんだろ?


「紫センパイの事を宜しくお願いします…」


深々とお辞儀をしてきた…


「え?何?吉野が敬語とかキモいんだけど」
「だってあたし…、紫センパイには何度も助けられて来たから。だから、だから、紫センパイを守れるなら、あたしに出来る事はなんでもする!でも、1番近くで紫センパイを守れるのは北条くんだけだから…。だから紫センパイの事を宜しくお願いします」
「吉野に言われなくても、僕がちゃんと紫サンを守りますー」
「人が真剣にお願いしてるのに〜。ふんだっ!あー、悔しい!」


そう、吉野はぷりぷり怒りながら行ってしまった





「ありがとう、吉野」
僕は小さく呟いた
吉野の気持ち、ちゃんと分かってるから





奏の探偵File
− 天誅 A−





あたしは北条くんから預かった天誅情報を、奏お兄ちゃんに届ける為にカフェに向かっていた


「あっ、奏お兄ちゃん」
「なの姫〜。自宅以外でなの姫に会えるなんて、奏感激♪」
「…お兄ちゃん、仕事モードに切り替えてよ」
「お兄ちゃんはいつもこんな感じだけどな〜」
「はい。これが北条くんから預かってきた、天誅情報」
「はい、しかと受け取りました」
「じゃあ宜しくね、奏お兄ちゃん」

手紙を奏お兄ちゃんに渡し終えて、あたしは席を立った


「ん?もう帰っちゃうの?」
「帰っていいよね?」
「もうちょっとデートしようよ〜、なの姫」
「仕事中でしょ?奏お兄ちゃん」
「今、なの姫から依頼を受けてたじゃん?これが仕事〜♪それにほら、この特大フルーツ盛りパフェとかなの姫好きじゃない?」
「…………食べる」
「ほい、キタ♪あっ、おっ姉さ〜ん、注文よろしくネ〜♪」


手をヒラヒラ振ってる奏お兄ちゃんに呼ばれて、顔を真っ赤にした綺麗なお姉さんがオーダーを取りに来た
相変わらず年上キラーな奏お兄ちゃん…
あの無邪気な笑顔にみんな騙されちゃうんだからっ



「ん〜、美味しいっ」
「あはー、パフェを頬張るなの姫超可愛い♪」
「写メは無しだよ?奏お兄ちゃん」
「えー、何で?いいじゃん!んで、蒼ちゃんと悠に自慢したいのに〜」
「もうっ。またケンカになっちゃうじゃん。ごちそう様でした」
「もう食べちゃったの!?」
「うん。奏お兄ちゃんも一緒に出る?」
「お兄ちゃんはもうちょいあの綺麗なお姉さんとお話するから〜」


奏お兄ちゃんの視線を辿ると、先程オーダーを取りに来たお姉さんが手を振っていた…


「はいはい。じゃあね、奏お兄ちゃん」
「うん、可愛い可愛いなの姫またお家でね〜♪気をつけて帰るんだよ」


呆れながら店を出ていったなの姫を見送り、例の手紙を読んでみた



「ふぅん…、室津ミオね…」



俺はターゲットの名を呟き、カフェを後にした
あっ、もちろんお姉さんの連絡先はゲット済みなのでご心配なく



さあ、パパッと仕事しちゃいますか〜




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