はじめての恋 B 〜 子供卒業します 〜




あれからつぐみちゃんと別れ、翠お姉ちゃんと一緒にショッピングしに来た



「あんなにちっちゃかったなのちゃんが恋かぁ〜」
「みんな子供扱いするけど、あたしもう高校生だよ?」
「なのちゃんはいくつになっても可愛いままなのよ♪
あっ、これなのちゃんに似合いそうね」
「えー、もうちょっと大人っぽいのがいいー」
「まだ背伸びは必要ないから、なのちゃんには♪」
「?」


あたしに似合いそうな洋服を次々とチョイスしていく、翠お姉ちゃん。とっても楽しそう

そういえば、翠お姉ちゃんの初恋っていつだったんだろ…
聞いてみよー


「ねえ、翠お姉ちゃんの初恋っていつだったの?」
「…え?」

洋服を選んでいた手が止まり、動かなくなってしまった


「翠お姉ちゃん?」

心配になって、顔を覗き込んだ

「あっ、も〜なに?お姉ちゃんの初恋聞いちゃう?でもタダでは聞かせてあげれないかな〜♪チッチッ」
「むー」
「きゃーっ、あれなんかなのちゅわんにとっても似合いそう♪」


そう、騒ぎながら反対側の棚に行ってしまった


「ほ〜ら〜、なのちゃんも来なさいよ♪」


いつものお姉ちゃんだ…
一瞬、お姉ちゃんの様子がおかしかったのはあたしの気のせいかな…?

あれから「なのちゃんに似合う洋服は全部買っちゃうんだから♪」とあたしが止めるのも聞かずに、大量に洋服を買って家に帰って来た


「ただいま〜」
「なのっ!いつもより帰りが遅いから心配したぞ」
「あっ、蒼お兄ちゃん」
「なのちゃんももう高校生よ?学校終わったら真っ直ぐ帰宅なんてしない年よ」
「だからなんで嫁に行ったお前がいる!」
「なのちゃんの入学祝いで一緒にショッピングしてたのよ♪ね〜?」
「うん」


洋服が入っている大量の袋を蒼お兄ちゃんに押しつけて、「またね、なのちゃん♪」と手を振っていつものように帰っていった


「あいつ、また物でなのの気を引きやがって…。なの〜、今度店で出す新作ケーキ食べるか?ちょうど作ったところだからな」
「きゃー、食べるー!」
「うんうん、蒼お兄ちゃんと食べよう」


夕飯を食べ終え、蒼お兄ちゃんの新作ケーキを頬張ってる時に、悠お兄ちゃんが帰宅してきた


「おふぁえりなふぁぃ」
「うん、ただいま。なの?口に食べ物を入れながら話してはいけないよ」
「ふぁーい」
「ん〜、その顔も可愛い!はい、写メ〜」


あらゆる角度からあたしの写メを撮りまくってる、蒼お兄ちゃん


「なの、今度はムービー撮るから蒼お兄ちゃんって可愛さ全開で言ってみて。はい、どうぞ♪」
「蒼お兄ちゃん」
「うはー!可愛い過ぎる!なあ、今度は蒼お兄ちゃん大好きって投げキッス付きで言って〜!」
「蒼兄さん、度を越えてますよ。明らかにヘンタイです」
「どこが?失礼なヤツだな」


撮った写メとムービーを見直して、ニヤニヤしてる蒼お兄ちゃん
…あたしもそう思うよ、悠お兄ちゃん


「そうだ、小出高校の初日はどうだった?」
「高校?」
「…今日入学式だったよね?」
「………………。」
「なの?どうした?黙ったりして」
「まさか、俺の大切ななのに何かしたヤツがいたのか!?」


“しものひじり”を思い出したら、またドキドキしだして胸がギューってなってきた


「なの?顔が真っ赤だよ?」
「ほら、なのの蒼お兄ちゃんに話してみなさい」
「ちょっと蒼兄さん、黙っててくれませんか?」
「なんだと!兄に向かってお前は」


あたしは机をバーンと両手で叩き、仁王立ちで踏ん反り返った


「なの?」
「ど、どした?」


「いーい?ドキドキ、ギューなのっ!
あたし、今日、ドキドキ、ギューしたからっっ!!
だからもう子供じゃないんだからね!今後、子供扱いしないでよね?」



あたしはそう言い放つと、全速力でリビングを出ていった

途中、帰って来た奏お兄ちゃんにも気づかないで、夢中で階段を駆け上がった


ベッドにジャンプして布団を被り、ドキドキが治まるのをひたすら待った


“しものひじり”があたしをきっと変えていく
そんな予感に包まれながら、その日はそのまま眠りについた


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