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hug

「よし、お前ら!今回はいろんな里で悪さをしているという悪党のアジトへの潜入任務だ。そこの頭がどこにいるのか突き止めて、里へ知らせるまでが我々の任務だ!隠密に、何事もなかったかのように全てを終わらせる!」
任務へ向かう前、ガイ先生は里の入り口で今回任務に同行する自分の教え子たちに大きな声でこう言った。
「そんな大きな声で……。この調子じゃ隠密どころかすぐバレてしまうぞ」
「ネジのいう通りよ!先生とリーには不向きな任務なんじゃない?」
ガイ先生はガハハとテンテンの心配を大きく笑い飛ばし、何も心配はいらないと言い弟子たちを引き連れて里を出て行った。
いよいよ潜入場所に辿り着くと、それぞれが作戦通りに動き出した。潜入するのはガイ先生とネジ。リーとテンテンは潜入はせずに外の様子を見張り、里への連絡係として身を隠す。
「それではみんな、無事に任務を成功させるぞ!」
ガイ先生は潜入前にリーとネジそしてテンテンにこう言って三人一緒に力いっぱい抱きしめた。
リーは「はい!」元気に返事をしたが、ネジとテンテンは少し嫌そうに抱きしめられていた。
そのあと、リーはネジとテンテンの肩に手を回し「頑張りましょう」と小声でエールを送ると、自分の持ち場へ戻った。
「ネジはこういうのやらないのね」
「当たり前だ。暑苦しい」
「まぁいいわ。がんばって」
テンテンはいつも通りに冷めた態度のネジの背中に手を当てながらそう言うとリーの後に続いた。
しばらくしてガイ先生とネジはさすが上忍だけあり、潜入の方はうまく行ったのだが、なんと外のリーとテンテンの方は敵に見つかってしまった。
リーとテンテンの侵入に気がついた敵たちが、つぎつぎにアジトの中から出てきた。
「わたしたちが木ノ葉の忍ってバレるわけにはいかないわ!」
「なるほど、今回ばかりは逃げるが勝ちですね……!」
リーとテンテンは茂みに隠れ、逃げるタイミングを見計らっているが、敵の数が多すぎる。リーが唇を噛み締めていると、テンテンは何かを決意したかのように言った。
「リー、私が煙玉を投げるわ。リーはその隙に逃げて!わたしは遠距離から攻撃ができるから、アンタの逃げ道をつくる」
「で、でも煙玉を使ったらそれこそ隠密には…」
「仕方がないわ。任務の成功失敗にしても、そろそろ先生とネジと合流する時間でしょ。先に行ってこのことを告げてよ。わたしもなるべくそっちに向かうから」
そしてテンテンはリーの返事を待たずに煙玉を投げ、敵の目を欺いている間にリーはアジトの入り口から合流地点までの道を駆け抜けていった。その途中何度か敵がリーのもとへ攻撃に走ったが、テンテンのクナイやら手裏剣によって全て制された。
テンテンはリーが無事逃げたのを確認するのと同時に木の上に駆け登り再び身を隠したが、焦っていた為に足を滑らせてアジトのすぐ横を流れていた川に落ちてしまったのだった。
「リー、こっちだ」
合流地点ではネジが向こうから走ってくるリーに声をかける。しかしこちらへやってくるのはリー一人でおまけにリーの様子がどうもおかしい。
「リー、テンテンはどうした」
「ネジ!それが敵が僕らの存在に気がついてしまって。姿が見られたわけではないのですが…。テンテンは僕をこっちに行かせるために一緒にはこれませんでした」
「なんてことだ」とガイ先生はリーが走ってきた方向を見て顔をしかめた。
「テンテンのことだから、うまくやっているだろうが……」
「はい」
リーがいつになく肩を落としていると、ネジはそんな友人の背中を優しく叩いた。
「オレはテンテンのところに戻る。任務は終わったからな。いいだろう、先生」
ネジはガイ先生が親指を立てると同時にアジトへの道を遡っていった。
途中やや流れの速い川にぶつかった。テンテンの安否を考えて焦る中、よくよくその景色みるとその川岸にテンテンが座っていたのだ。どうやら怪我をしているらしく、動けない様子だった。
「テンテン!」
ネジが大きな声でテンテンの名前を呼ぶと、ずぶ濡れで頭をぼざぼさにしたテンテンがやや気まずそうに振り返った。
「ネジ……。ごめん、心配かけたわね」
「あ!テンテン!先生!!テンテン無事です!!!」
ネジの後ろからやってきたリーは嬉しそうに叫ぶと、すぐさま川岸にすっ飛んで行き、足を怪我したテンテンを抱き起こしてやった。そしてガイ先生も目に涙を浮かべて、テンテンの元へ走っていくと思いっきり抱きしめた。
「よくぞ無事だったな!テンテン!!」
「ちょっと先生、大袈裟だって〜」
「テンテン、よかったです!」
リーもテンテンの右手をしっかりと握りしめテンテンの無事を喜んでいた。
そんな暑い二人にテンテンは顔を歪め、助けを呼ぶが如くリーのいない左側の方へ顔を向けるとそこには涼しい顔をしたネジがいた。いつもより少しだけ優しい目をしているような、でも口元はどこか怒っているようにも見えた。
「ネジ」
「……無事でよかった」
「ありがと」
テンテンがふっと目尻をさげると、ネジはテンテンの左腕を引っ張りガイ先生とリーから引き離したかと思うと、力いっぱいテンテンを抱きしめた。
「ちょっとネジ、ネジはこういうことしないんじゃないの」
「するときもある」
テンテンはネジに抱きしめられながら頬を赤く染めた。リーやガイ先生のハグは暑苦しいだけのように感じるが、ネジのハグはどこか恥ずかしく、嬉しくなった。
「心配かけてごめんね。ありがとう」
テンテンもネジの背中に手を回すと、リーとガイ先生はまだその腕の中にテンテンがいるような格好のまま二人を無言で見つめ、心では微笑ましく思っていた。
こうして今回の潜入任務は無事終わったのだが、肝心の里への連絡をすっかり忘れたガイ班は綱手のこっぴどくしかられたのであった。
しかしテンテンの非常事態を説明したところ、綱手は笑顔でテンテンの無事を喜び、「怖かっただろう、頑張ったな」と抱きしめた。
このときテンテンは憧れの綱手のハグに他の誰のハグよりも感動したのだった。